アウストラロピテクス属化石「リトルフット(StW 573)」の新たな年代
南アフリカ共和国のスタークフォンテン(Sterkfontein)洞窟で発見されたアウストラロピテクス(Australopithecus)属化石の年代についての研究(Granger et al., 2015)が報道されました。ナショナルジオグラフィックでも報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。このアウストラロピテクス属化石「StW 573」は、「リトルフット」と呼ばれています。「StW 573」は1994年に発見され、多くの骨格が残っているとして大いに注目されたのですが、取り出すことが容易ではなく、長い時間がかけられています。
本論文は、新たな方法により「StW 573」の年代を推定しています。じゅうらいの流華石を対象としたウラン-鉛年代測定法と古地磁気層序学に基づく推定年代は、角礫岩内で形成された空洞を流華石が満たしていくという形成過程を経ているため、その推定年代は不確実である、と本論文は指摘しています。本論文は代わりに、宇宙線に曝されて初めて生成されるアルミニウム26-ベリリウム10を用いて、「StW 573」の年代を推定しています。その結果、「StW 573」の推定年代は367万±16万年前となり、流華石を対象とした時の以前の推定年代220万年前頃よりもずっとさかのぼることになりました。この推定年代は、アウストラロピテクス属のなかでも、アフリカ東部の初期アファレンシス(Australopithecus afarensis)とほぼ同じとなります。
「StW 573」はアウストラロピテクス属と考えられるものの、同時代のアウストラロピテクス属のアファレンシスとは異なるところがあり、アファレンシスの後に出現した、頑丈型とされるパラントロプス(Paranthropus)属の系統にもっと類似している、と本論文の著者の一人であるクラーク(Ronald Clarke)博士は指摘しています。クラーク博士は、「StW 573」をアウストラロピテクス属の新種プロメテウス(Australopithecus prometheus)と命名しようと考えているようです。
アウストラロピテクス属には多くの種が存在してアフリカで広範に拡散しており、パラントロプス属や、アウストラロピテクス属でもアファレンシスより後に出現したと考えられるアフリカヌス(Australopithecus africanus)は、アファレンシスとは異なる系統のアウストラロピテクス属から進化したのかもしれない、という可能性をクラーク博士は示唆しています。アウストラロピテクス属の進化もかなり複雑だった可能性が高そうで、化石の新発見と研究の進展が注目されます。
また本論文は、スタークフォンテン洞窟のオルドワン(Oldowan)石器群の新たな年代も報告しています。オルドワンは、伝統的な石器製作技術の区分では、最古の様式1(Mode 1)とされています(関連記事)。本論文は、スタークフォンテン洞窟のオルドワンの年代を218万±21万年前と推定しています。スタークフォンテン洞窟と同じく南アフリカ共和国にあるスワルトクランス(Swartkans)洞窟では、オルドワンの年代が219万±8万年前までさかのぼる可能性が指摘されており、アフリカ南部にも、オルドワン石器を製作する人類が200万年以上前から存在した可能性は高そうです。
参考文献:
Granger DE. et al.(2015): New cosmogenic burial ages for Sterkfontein Member 2 Australopithecus and Member 5 Oldowan. Nature, 522, 7554, 85–88.
http://dx.doi.org/10.1038/nature14268
本論文は、新たな方法により「StW 573」の年代を推定しています。じゅうらいの流華石を対象としたウラン-鉛年代測定法と古地磁気層序学に基づく推定年代は、角礫岩内で形成された空洞を流華石が満たしていくという形成過程を経ているため、その推定年代は不確実である、と本論文は指摘しています。本論文は代わりに、宇宙線に曝されて初めて生成されるアルミニウム26-ベリリウム10を用いて、「StW 573」の年代を推定しています。その結果、「StW 573」の推定年代は367万±16万年前となり、流華石を対象とした時の以前の推定年代220万年前頃よりもずっとさかのぼることになりました。この推定年代は、アウストラロピテクス属のなかでも、アフリカ東部の初期アファレンシス(Australopithecus afarensis)とほぼ同じとなります。
「StW 573」はアウストラロピテクス属と考えられるものの、同時代のアウストラロピテクス属のアファレンシスとは異なるところがあり、アファレンシスの後に出現した、頑丈型とされるパラントロプス(Paranthropus)属の系統にもっと類似している、と本論文の著者の一人であるクラーク(Ronald Clarke)博士は指摘しています。クラーク博士は、「StW 573」をアウストラロピテクス属の新種プロメテウス(Australopithecus prometheus)と命名しようと考えているようです。
アウストラロピテクス属には多くの種が存在してアフリカで広範に拡散しており、パラントロプス属や、アウストラロピテクス属でもアファレンシスより後に出現したと考えられるアフリカヌス(Australopithecus africanus)は、アファレンシスとは異なる系統のアウストラロピテクス属から進化したのかもしれない、という可能性をクラーク博士は示唆しています。アウストラロピテクス属の進化もかなり複雑だった可能性が高そうで、化石の新発見と研究の進展が注目されます。
また本論文は、スタークフォンテン洞窟のオルドワン(Oldowan)石器群の新たな年代も報告しています。オルドワンは、伝統的な石器製作技術の区分では、最古の様式1(Mode 1)とされています(関連記事)。本論文は、スタークフォンテン洞窟のオルドワンの年代を218万±21万年前と推定しています。スタークフォンテン洞窟と同じく南アフリカ共和国にあるスワルトクランス(Swartkans)洞窟では、オルドワンの年代が219万±8万年前までさかのぼる可能性が指摘されており、アフリカ南部にも、オルドワン石器を製作する人類が200万年以上前から存在した可能性は高そうです。
参考文献:
Granger DE. et al.(2015): New cosmogenic burial ages for Sterkfontein Member 2 Australopithecus and Member 5 Oldowan. Nature, 522, 7554, 85–88.
http://dx.doi.org/10.1038/nature14268
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