高度な認識機能における扁桃体の働き

 長期にわたる報酬の備えに関わる作業における扁桃体の働きに関する研究(Hernádi, Grabenhorst, and Schultz., 2015)が公表されました。扁桃体は、恐れや攻撃性に関連する脳の領域とされ、報酬関連行動に関わることが明らかになっています。しかし、長期にわたる報酬の備えに関わる作業は大脳皮質の属性とされてきました。しかしこの研究は、比較的「原始的な行動」にのみ関わるとされていた扁桃体が、そうした「高度な認識機能」においても役割を果たしている可能性を示唆しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


扁桃体の意外な働き

 霊長類の扁桃体にあるニューロンは将来見込まれる報酬への備えに関わる可能性があるとの報告が、今週のオンライン版に掲載される。通常、恐れや攻撃性に関連する脳の領域とされる扁桃体は、報酬関連行動に関わることが分かっている。一方、長期にわたる報酬の備えに関わる作業は通常、大脳皮質の属性とされているが、今回の研究は、扁桃体がこの作業に関与していることを示している。

 Fabian Grabenhorstほかの研究者は、ヒトではない霊長類について、報酬を消費するか、数回の試行にわたって蓄えるかのどちらかを選択する作業を研究した。この作業では、報酬を蓄えると進行につれて利益が得られるようになっている。心得のある投資家と同じように、被験サルは利益率が高いとき は報酬を蓄えようとし、利益率が低いと少ししか蓄えなかった。扁桃体のニューロンからとった記録によると、サルが蓄えるとその扁桃体ニューロンは、サルが蓄えようとした試行の回数を反映する神経活動パターンを、サルがその計画を起こす前に示した。このような扁桃体ニューロンでの 「計画活動」の程度は、サルがどれほど要領よく報酬を蓄えるかを予測するものだった。今回の発見は、比較的原始的な行動にのみ関わるとされていた扁桃体が、高度な認識機能にも同様に役割を持つ可能性を示唆している。



参考文献:
Hernádi I, Grabenhorst F, and Schultz W.(2015): Planning activity for internally generated reward goals in monkey amygdala neurons. Nature Neuroscience, 18, 3, 461–469.
http://dx.doi.org/10.1038/nn.3925

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