『天智と天武~新説・日本書紀~』2014年の回顧と2015年の展望
発売日を基準にして、2014年の内容をざっと回顧し、2015年の展開を予想していきます。2014年は、『ビッグコミック』2014年1月25日号掲載の第34話「神と共にある男」に始まり、『ビッグコミック』2015年1月10日号掲載の第55話「定恵帰国」で終わりとなりました。残念ながら休載が2回あったので、合計では22話となります。作中での時間経過でいうと、661年(西暦は厳密な換算ではなく、1年単位での換算です)晩春~初夏の頃から、665年11月までが描かれましたから、1年間22話で4年半ほど進んだことになります。
ちなみに2013年は、『ビッグコミック』2013年1月25日号掲載の第10話「豊璋の泣き所」に始まり、『ビッグコミック』2014年1月10日号掲載の第33話「熟田津の歌」で終わりとなりました。休載はなかったので、合計では24話となります。作中での時間経過でいうと、650年晩秋~初冬の頃から、661年晩春~初夏の頃までが描かれましたから、1年間24話で10年半ほど進んだことになります。2話多いとはいえ、2014年と比較すると、かなり作中での時間が経過しています。
豊璋(中臣鎌足)が愛息の真人(定恵)を中大兄皇子(天智帝)に紹介してから定恵が唐へと出立するまで、作中では連続した短期間の話のように見えるものの2年半ほどが、斉明帝(皇極帝、宝皇女)の重祚から有間皇子の話が本格的に動くまで3年ほどが、「巡り物語」から百済滅亡の報せが届くまで2年近くが一気に経過しているので、ここで作中での時間が大きく進んだ、と言えるでしょう。一方、2014年は、白村江の戦いの話が長く続いたこともあり、作中での時間の経過速度が緩やかになりました。
2014年をざっとまとめると、斉明帝の崩御へといたる話から始まり、朝鮮半島における百済復興軍の内紛と白村江の戦いでの倭(日本)軍惨敗を経て、中大兄皇子・大海人皇子・豊璋の帰国と、唐からの使者とその案内人兼通訳の定恵が飛鳥後岡本宮を訪れたところまでが描かれました。唐からの使者の目的は、倭も参戦した朝鮮半島での騒乱の「戦後処理」という側面が多分にあったでしょうから、2014年は朝鮮半島情勢を中心に話が進んだ、と言えるでしょう。
その朝鮮半島情勢のなかでも、上述したように、白村江の戦いとその直後の「国際軍事裁判」と脱出劇は、かなり長く描かれました。作中では、第44話「白村江」から第52話「苦い帰国」までの合計9話(第43話「朝鮮出兵」から数えると10話)となります。白村江の戦いは最初の山場になるだろうから詳しく描かれるのではないか、と以前から予想していましたが、正直なところ、中大兄皇子・大海人皇子兄弟の痴話喧嘩がややくどく、多少だれてしまった感は否めませんでした。それでも、兄弟の心理戦・駆け引きという本作の主題に沿った話になっており、なかなか楽しめました。
2015年も、唐も含めての朝鮮半島情勢は重要な背景として描かれるでしょうが、中大兄皇子・大海人皇子・鎌足という主要人物はこの後ずっと「国内」にいるでしょうから、国内の政治情勢と人間模様が重点的に描かれることになるでしょう。まずは定恵帰国の続きが描かれますが、次回では終わらなさそうで、少なくともあと2回は続きそうです。定恵の話が終わった後は、近江遷都と中大兄皇子の即位(天智帝)が次の重要事件となりそうですが、その前に667年2月以前の大田皇女の死が描かれそうです。以下、今後の展開と話数を予想してみます。
●定恵の運命・・・2~3話
定恵が大海人皇子に匿われて生き延び、粟田真人として後半生を生きる、という私の予想通りの展開になるのか、それとも通説にしたがって殺されることになるのか、注目されます。
●大田皇女の死・・・0~2話
大田皇女は同父同母妹の鸕野讚良皇女(持統天皇)とともに作中では重要人物だと思うのですが、大海人皇子との結婚後は、姉妹ともにあまり目立っていないので、その死はほとんど描かれないかもしれません。それぞれの息子の将来もめぐっての鸕野讚良皇女との確執なども描かれれば、話が面白くなりそうですが。
●近江への遷都と中大兄皇子の即位・・・4~5話
すでに作中では中大兄皇子が遷都を示唆していますが、大海人皇子がどのように対応するのか、注目されます。大海人皇子のことですから、民の負担になるとして、反対するのではないか、と思います。
●蒲生野での狩り・・・3~4話
額田王の扱いは大きいので、ここは詳しく描かれそうな気がします。
●酒宴での大海人皇子と中大兄皇子の対立・・・2~3話
大海人皇子が酒宴で槍を板に突き刺し、天智帝(中大兄皇子)が激怒して大海人皇子を殺そうとしたところ、鎌足がとりなした、という『藤氏家伝』の有名な逸話が描かれそうです。鎌足が大海人皇子を庇うのは、定恵を助けてもらったから、というのが私の予想です。
●高句麗の滅亡などの朝鮮半島および中国大陸情勢・・・合計1~2話程度
2014年ほどではないにしても、朝鮮半島や唐の情勢はそれなりに描かれるのではないか、と予想しています。
●鎌足の死・・・4~5話
中大兄皇子・大海人皇子・鎌足の三人が主役とも言えるだけに、鎌足の死はその前後も含めて詳しく描かれそうです。
●庚午年籍など政治体制の整備や天智朝の人事・・・4~5話
大友皇子の太政大臣就任は、天智帝の後継者をめぐる駆け引きとも絡んで、かなり詳しく描かれるのではないか、と予想しています。
●未来パート・・・合計1~2話程度
これまで2回描かれてきた奈良時代初期の『日本書紀』編纂の場面のように、壬申の乱よりも後の出来事がたまに挿入されるのではないか、と思います。2015年は、天武朝や持統朝の様子も描かれることを期待しています。
●天智帝の崩御・・・5~6話
天智帝が病に倒れてから崩御するまでは、天智帝と大海人皇子との駆け引きも含めて、かなり詳しく描かれることでしょう。
ここまで合計すると、26話~37話となります。おそらく2015年には天智帝が病に倒れるところまでは描かれず、進むとしても、大友皇子の太政大臣就任あたりまでになるのではないか、と予想しています。そうだとすると、作中では5年ほど経過することになりますが、これは2014年と比較すると、2015年に休載がなかったとしても、さほど変わらないかやや速い展開となります。そう考えると、2015年には鎌足の死の頃までが描かれるのかな、とも思います。そうだとすると、作中では4年弱経過することになります。ともかく今は、連載が打ち切りになったり、掲載誌が廃刊になったりすることなく、本作が長く続くことを願っています。
ちなみに2013年は、『ビッグコミック』2013年1月25日号掲載の第10話「豊璋の泣き所」に始まり、『ビッグコミック』2014年1月10日号掲載の第33話「熟田津の歌」で終わりとなりました。休載はなかったので、合計では24話となります。作中での時間経過でいうと、650年晩秋~初冬の頃から、661年晩春~初夏の頃までが描かれましたから、1年間24話で10年半ほど進んだことになります。2話多いとはいえ、2014年と比較すると、かなり作中での時間が経過しています。
豊璋(中臣鎌足)が愛息の真人(定恵)を中大兄皇子(天智帝)に紹介してから定恵が唐へと出立するまで、作中では連続した短期間の話のように見えるものの2年半ほどが、斉明帝(皇極帝、宝皇女)の重祚から有間皇子の話が本格的に動くまで3年ほどが、「巡り物語」から百済滅亡の報せが届くまで2年近くが一気に経過しているので、ここで作中での時間が大きく進んだ、と言えるでしょう。一方、2014年は、白村江の戦いの話が長く続いたこともあり、作中での時間の経過速度が緩やかになりました。
2014年をざっとまとめると、斉明帝の崩御へといたる話から始まり、朝鮮半島における百済復興軍の内紛と白村江の戦いでの倭(日本)軍惨敗を経て、中大兄皇子・大海人皇子・豊璋の帰国と、唐からの使者とその案内人兼通訳の定恵が飛鳥後岡本宮を訪れたところまでが描かれました。唐からの使者の目的は、倭も参戦した朝鮮半島での騒乱の「戦後処理」という側面が多分にあったでしょうから、2014年は朝鮮半島情勢を中心に話が進んだ、と言えるでしょう。
その朝鮮半島情勢のなかでも、上述したように、白村江の戦いとその直後の「国際軍事裁判」と脱出劇は、かなり長く描かれました。作中では、第44話「白村江」から第52話「苦い帰国」までの合計9話(第43話「朝鮮出兵」から数えると10話)となります。白村江の戦いは最初の山場になるだろうから詳しく描かれるのではないか、と以前から予想していましたが、正直なところ、中大兄皇子・大海人皇子兄弟の痴話喧嘩がややくどく、多少だれてしまった感は否めませんでした。それでも、兄弟の心理戦・駆け引きという本作の主題に沿った話になっており、なかなか楽しめました。
2015年も、唐も含めての朝鮮半島情勢は重要な背景として描かれるでしょうが、中大兄皇子・大海人皇子・鎌足という主要人物はこの後ずっと「国内」にいるでしょうから、国内の政治情勢と人間模様が重点的に描かれることになるでしょう。まずは定恵帰国の続きが描かれますが、次回では終わらなさそうで、少なくともあと2回は続きそうです。定恵の話が終わった後は、近江遷都と中大兄皇子の即位(天智帝)が次の重要事件となりそうですが、その前に667年2月以前の大田皇女の死が描かれそうです。以下、今後の展開と話数を予想してみます。
●定恵の運命・・・2~3話
定恵が大海人皇子に匿われて生き延び、粟田真人として後半生を生きる、という私の予想通りの展開になるのか、それとも通説にしたがって殺されることになるのか、注目されます。
●大田皇女の死・・・0~2話
大田皇女は同父同母妹の鸕野讚良皇女(持統天皇)とともに作中では重要人物だと思うのですが、大海人皇子との結婚後は、姉妹ともにあまり目立っていないので、その死はほとんど描かれないかもしれません。それぞれの息子の将来もめぐっての鸕野讚良皇女との確執なども描かれれば、話が面白くなりそうですが。
●近江への遷都と中大兄皇子の即位・・・4~5話
すでに作中では中大兄皇子が遷都を示唆していますが、大海人皇子がどのように対応するのか、注目されます。大海人皇子のことですから、民の負担になるとして、反対するのではないか、と思います。
●蒲生野での狩り・・・3~4話
額田王の扱いは大きいので、ここは詳しく描かれそうな気がします。
●酒宴での大海人皇子と中大兄皇子の対立・・・2~3話
大海人皇子が酒宴で槍を板に突き刺し、天智帝(中大兄皇子)が激怒して大海人皇子を殺そうとしたところ、鎌足がとりなした、という『藤氏家伝』の有名な逸話が描かれそうです。鎌足が大海人皇子を庇うのは、定恵を助けてもらったから、というのが私の予想です。
●高句麗の滅亡などの朝鮮半島および中国大陸情勢・・・合計1~2話程度
2014年ほどではないにしても、朝鮮半島や唐の情勢はそれなりに描かれるのではないか、と予想しています。
●鎌足の死・・・4~5話
中大兄皇子・大海人皇子・鎌足の三人が主役とも言えるだけに、鎌足の死はその前後も含めて詳しく描かれそうです。
●庚午年籍など政治体制の整備や天智朝の人事・・・4~5話
大友皇子の太政大臣就任は、天智帝の後継者をめぐる駆け引きとも絡んで、かなり詳しく描かれるのではないか、と予想しています。
●未来パート・・・合計1~2話程度
これまで2回描かれてきた奈良時代初期の『日本書紀』編纂の場面のように、壬申の乱よりも後の出来事がたまに挿入されるのではないか、と思います。2015年は、天武朝や持統朝の様子も描かれることを期待しています。
●天智帝の崩御・・・5~6話
天智帝が病に倒れてから崩御するまでは、天智帝と大海人皇子との駆け引きも含めて、かなり詳しく描かれることでしょう。
ここまで合計すると、26話~37話となります。おそらく2015年には天智帝が病に倒れるところまでは描かれず、進むとしても、大友皇子の太政大臣就任あたりまでになるのではないか、と予想しています。そうだとすると、作中では5年ほど経過することになりますが、これは2014年と比較すると、2015年に休載がなかったとしても、さほど変わらないかやや速い展開となります。そう考えると、2015年には鎌足の死の頃までが描かれるのかな、とも思います。そうだとすると、作中では4年弱経過することになります。ともかく今は、連載が打ち切りになったり、掲載誌が廃刊になったりすることなく、本作が長く続くことを願っています。
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