縄文時代の寒冷化をめぐる議論

 縄文時代の寒冷化をめぐる議論について報道されました。先月(2015年11月)中旬に東京都内で開かれた公開シンポジウム「縄文文化の繁栄と衰退」にて、縄文時代後期~晩期に寒冷化の影響があったとの明確な証拠はない、との見解が提示されたそうです。縄文時代中期末以降の寒冷化により、縄文時代後期には社会的停滞が見られた、との通説に見直しを迫る見解であり、会場でも大きな反響があったようで、注目されます。

 動植物の遺存体などに関する最近の研究では、縄文時代後期~晩期に海水温の下がった証拠は見つかっていないとのことで、関東では縄文時代晩期でも亜熱帯に多いハイガイが棲息しており、ニシンやサケが南下してきた様子もない、と指摘されています。また、縄文時代中期末以降の寒冷化の証拠とされてきたトチノキの利用の増加については、低地林の開発が進んだためであり、他の寒冷種の植物は増えていない、と指摘されています。

 古人骨の分析による食性の研究でも、東京湾岸の貝塚出土人骨では縄文時代中期と後期とで違いは認められない、と指摘されています。また、縄文時代後期~晩期における社会的停滞という説の根拠とされてきた集落や竪穴式住居の数の減少についても、西関東では後期以降に遺跡数が減少するものの、東関東では増加する場所もある、と指摘されています。縄文時代中期末以降の寒冷化の証拠とされてきた海水面の低下は、寒冷化以外の原因で起こっていた可能性も指摘されているそうで、今後の研究の進展が注目されます。

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