Peter B deMenocal「気候変動のインパクト」
『日経サイエンス』2014年12月号の特集「人類進化 今も続くドラマ」(関連記事)第1部「我々はどこから来たのか」に掲載された解説です。この解説は、気候変動が人類の進化に大きな影響力を及ぼしたことを強調しています。この解説が取り上げている年代は、290万~240万年前頃と、190万~160万年前頃です。この年代に気候が大きく変動し、人類の進化にも大きな動きが見られた、というわけです。この年代に気候が大きく変動したことは、海底の堆積物や土壌の分析で明らかになってきました。
300万~200万年前頃に、アフリカ東部では草原が大きく拡大し、逆に森林が縮小しました。この期間に含まれる290万~240万年前頃の間に、アファレンシス(Australopithecus afarensis)が絶滅し、ホモ属につながる系統のハビリス(Homo habilis)と、いわゆる頑丈型猿人が出現します。前者はC4タイプの植物もC3タイプの植物も動物の肉も含む多様な食資源を摂取していたのにたいして、後者はC4タイプの植物への依存度が高く、食資源の範囲が狭いことが特徴です。同位体分析の発達により、こうした違いがより詳細に明らかになってきました。
ハビリスもいわゆる頑丈型猿人も、草原(C4タイプの植物)の拡大に対応して、それ以前の人類とは大きく異なる種へと進化し、長期的には、柔軟性のより高いハビリス型の人類が生き残った、というのがこの解説の見通しです。190万~160万年前頃にはさらに草原が拡大し、長距離歩行により適するなど、現代人にずっと近いエレクトス(Homo erectus)が出現しました。なお、アフリカの初期エレクトスを別種エルガスター(Homo ergaster)と区分する見解もあります。
このように人類の進化における気候変動の影響力の大きさを強調するこの解説ですが、気候変動が単純なものではなかったことも指摘されています。つまり、一直線にじょじょに寒冷化・乾燥化していったのではなく、(地球の規則的な軌道変化に反応して)周期的に湿潤期と乾燥期が交互に訪れていた、というわけです。このように、長期的には気候が寒冷化・乾燥化に向かうとしても、より短期的には気候が周期的に湿潤期と乾燥期を繰り返すような場合、食性の範囲が広いなど、行動の柔軟な種の方が生き残りやすいのかもしれません。
参考文献:
deMenocal PB. (2014)、『日経サイエンス』編集部訳「気候変動のインパクト」『日経サイエンス』2014年12月号P62-68
300万~200万年前頃に、アフリカ東部では草原が大きく拡大し、逆に森林が縮小しました。この期間に含まれる290万~240万年前頃の間に、アファレンシス(Australopithecus afarensis)が絶滅し、ホモ属につながる系統のハビリス(Homo habilis)と、いわゆる頑丈型猿人が出現します。前者はC4タイプの植物もC3タイプの植物も動物の肉も含む多様な食資源を摂取していたのにたいして、後者はC4タイプの植物への依存度が高く、食資源の範囲が狭いことが特徴です。同位体分析の発達により、こうした違いがより詳細に明らかになってきました。
ハビリスもいわゆる頑丈型猿人も、草原(C4タイプの植物)の拡大に対応して、それ以前の人類とは大きく異なる種へと進化し、長期的には、柔軟性のより高いハビリス型の人類が生き残った、というのがこの解説の見通しです。190万~160万年前頃にはさらに草原が拡大し、長距離歩行により適するなど、現代人にずっと近いエレクトス(Homo erectus)が出現しました。なお、アフリカの初期エレクトスを別種エルガスター(Homo ergaster)と区分する見解もあります。
このように人類の進化における気候変動の影響力の大きさを強調するこの解説ですが、気候変動が単純なものではなかったことも指摘されています。つまり、一直線にじょじょに寒冷化・乾燥化していったのではなく、(地球の規則的な軌道変化に反応して)周期的に湿潤期と乾燥期が交互に訪れていた、というわけです。このように、長期的には気候が寒冷化・乾燥化に向かうとしても、より短期的には気候が周期的に湿潤期と乾燥期を繰り返すような場合、食性の範囲が広いなど、行動の柔軟な種の方が生き残りやすいのかもしれません。
参考文献:
deMenocal PB. (2014)、『日経サイエンス』編集部訳「気候変動のインパクト」『日経サイエンス』2014年12月号P62-68
この記事へのコメント