最近の選挙での共産党の議席増の要因(追記有)

追記(2014年12月1日)
 表題を「最近の選挙での共産党の議席増の要因」としておきながら、比例代表選・比例区での得票率・得票数に重きを置いた記事になっており、整合性に欠ける記事になってしまった感が否めません。共産党の「議席増」そのものというよりは、共産党への支持が高まっているのか、ということを意識した記事だったので、表題は「躍進」とした方がよかったかな、と今では考えています。比例代表選・比例区での得票率・得票数に重きを置いたのは、共産党への支持について見ていくには、死票の多くなる選挙区よりも、比例代表選・比例区のほうが妥当ではないか、と考えたためです。

 国家鮟鱇さんのブログで続編となる記事「ネトウヨが共産党を勝たせる可能性(その2)」が公開されました。革新層における共産党支持層とそれ以外の支持層との乖離という指摘ですが、たとえば、共産党の中核層(党員など)と社民党(およびその前身の社会党)のそれとの間の関係については、その通りだと思います。「公平な立場」をとっているという自己認識の「ネトウヨ」が多くいるのではないか、との指摘に関しては、言われてみると思い当たるところが多々あります。「ネトウヨ」をそれほど観察しているわけではないので、断言できるほどの自信はまったくないのですが。




 今日はもう1本掲載します。「ネトウヨが共産党を勝たせる可能性」という記事を読みました。国家鮟鱇さんの記事には教えられること・考えさせられることが多いのですが、私見とは異なりますし、以前から一度まとめておこうと考えてきた問題でもあるので、この機会に述べてみることにしました。もっとも、政治学の方法論・知見を踏まえたものではなく、たんにウィキペディアで議席数・得票数・得票率(ウィキペディアに依拠してはならないというのは一般論として妥当なのですが、日本の選挙結果の議席数・得票数・得票率に関しては、ほぼ信頼できると判断しています)を参照しつつ、自分の知見の及ぶ範囲で思いつきを述べたにすぎませんが。

 上記の記事では、今年(2014年)の都知事選で田母神俊雄候補が610865票(得票率12.55%)を獲得したことや、昨年(2013年)の東京都議選で共産党の議席が8から17に増えたことについて、右も左も極端化しているのではないかという以前の見解だけではなく、さらに踏み込んだ、田母神候補に投票した人と共産党に投票した人で重なっている部分が相当あるのではないか、との推測が提示されています。そうした側面があるかもしれないということに関しては、私も否定できるだけの根拠を提示することはできません(一般論として「極右」と「極左」は近いとよく言われます)。

 ただ、私にとっても予想をはるかに上回る都知事選での田母神候補の得票数については、私も現時点では上手く考えがまとまらないのですが、最近の選挙での共産党の「躍進」については、都知事選での田母神候補の(私も含めておそらくは多くの人にとって予想をはるかに上回る)得票数とは別の要因が大きいのではないか、と私は考えています。

 1970年代以降の日本の選挙動向を左右しているのは、もちろん固定的ではないにしても、常に無視できないくらい一定の割合以上存在する、都市部の「改革」志向層と反自民党層をどこが吸収できているのかということではないだろうか、というのが私の見解です。新自由クラブから日本新党・新政党などの時代、さらには民主党からみんなの党や日本維新の会など、短期間でも「輝いた」非自民党の諸政党は、都市部の「改革」志向層と反自民党層を(民主党はやや長く、その他の政党は一時的に)強く惹きつけていたためだろう、と思います。

 都市部の「改革」志向層と反自民党層は、かなり重なるところがあるにしても、重ならないところも多くあって、自民党政権下での経済・政治状況により、その割合が増減する、と私は考えています。たとえば、経済状況(あくまでも、実態がどうかということよりも、各個人の観測範囲での実感や、マスコミ報道の影響により形成される感覚が大きいわけですが)や政治状況の変化(汚職事件が大々的に報道されたり、党内抗争が激化したり、などといったこと)にともない、都市部の「改革」志向層と反自民党層も増減するものの、常に無視できないくらい一定の割合以上存在するのではないか、というわけです。

 共産党の議席数に大きく影響してくるのは、このうち反自民党層であり、この層の受け皿として共産党の求心力が高まる時に共産党は議席を増やしているのではないか、というのが私の見解です。ただ、それは共産党の政策・政治姿勢が積極的に支持されているというよりは、非自民の諸政党の求心力が低下している状況下で、反自民党層の消極的な投票先として選択されているだけではないのか、と私は考えています。以下、定数や比例選での投票方式に変動はありますが、基本的には現行の選挙制度となって以降の共産党の選挙結果を引用します。国政選挙は比例代表戦・比例区での得票率・得票(衆院選は1996年以降、参院選は1983年以降)、都議選は議席数(国政選挙との比較の為1981年以降)の変遷です。


衆院選
●1996年・・・13.08%(7268743票)
●2000年・・・11.23%(6719016票)
●2003年・・・ 7.76%(4586172票)
●2005年・・・ 7.25%(4919487票)
●2009年・・・ 7.03%(4943886票)
●2012年・・・ 6.13%(3689159票)

参院選
●1983年・・・ 8.95%(4163877票)
●1986年・・・ 9.47%(5430838票)
●1989年・・・ 8.81%(5012424票)
●1992年・・・10.61%(4817001票)
●1995年・・・10.38%(4314830票)
●1998年・・・15.66%(8758759票)
●2001年・・・ 9.87%(5362958票)
●2004年・・・ 9.84%(5520141票)
●2007年・・・ 7.48%(4407932票)
●2010年・・・ 6.10%(3563556票)
●2013年・・・ 9.68%(5154055票)

都議選
●1981年・・・16議席
●1985年・・・19議席
●1989年・・・14議席
●1993年・・・13議席
●1997年・・・26議席
●2001年・・・15議席
●2005年・・・13議席
●2009年・・・ 8議席
●2013年・・・17議席


 こうして一覧にまとめてみると、2013年の都議選・参院選で共産党は「躍進」したように見えるとはいえ、基本的には長期低落傾向にあるように思います。これは、ソ連・東ヨーロッパの社会主義諸国の体制崩壊が象徴するように、共産党の提示するイデオロギーが魅力を失ったことが要因なのでしょう。もっとも、プラハの春やポーランドの連帯運動など、それ以前からソ連をはじめとする社会主義諸国の実情が一般にも広く浸透しつつあったので、衆院選の議席数の推移や「革新自治体」の退潮からも、共産党の衰退は1970年代には始まっていた、とみるのが妥当でしょう(1979年の衆院選での共産党の「躍進」は、増税忌避の反自民党層が一時的に共産党に流れ込んだ「バブル」と言うべきでしょう)。

 これは私の観測範囲からの実感にすぎませんが、共産党では日本社会全体の傾向以上に高齢化が進んでいるのではないか、と考えている人は少なくないだろう、と思います。駅前で政治活動を行なっている共産党員(もしくは支持者)をよく見かけますが、高齢者が多いことに気づきます。もちろん、中年以下は仕事のためになかなか政治活動に時間を割けないという事情はあるにしても、共産党の場合、他の主要政党よりも高齢化が進んでいるのではないか、との印象を受けます。共産党の提示するイデオロギーが魅力を失い、若い世代を上手く取り込めていないのではないか、と思います。

 こうした状況下での2013年の都議選・参院選で、共産党が「躍進」したように見えるとはいえ、参院選の比例区での得票率も都議選の議席数も、1980年代以降では平凡なものと言えるでしょう。この中では、1997年の都議選と1998年の参院選の結果が突出しています。これは同じような政治状況の中での選挙による結果であり、反自民党の受け皿として求心力の強い政党が存在していなかったからではないか、と思います。この動向は、やや弱いとはいえ、1997年の都議選と1998年の参院選の前の1996年の衆院選でも見られると言えそうで、この時の共産党の比例区での得票率は13.08%と、それ以降の共産党にしてはかなり高くなっています。

 1997年の都議選の時点では、民主党は結成されてからまだ日が浅く、組織がじゅうぶん整っておらず、自民党とともに二大政党の一方として成長することを期待されていた新進党は、内紛・分裂により一時よりも支持を失っており、公認候補全員が落選しました。新進党はけっきょく1997年の末に解散となりました。1997年の都議選での共産党の26議席は、都議選史上共産党の最高議席数となります。

 1998年の参院選の時点でも同様の状況で、当時まだ結成されて日の浅い民主党をはじめとしてほとんどの政党(当時、政党の離合集散が激しかったので、政党の誕生・消滅・構成員の変動が顕著でした)が一度は政権に加わっており、政治の混迷の責任を負っていたとも言えたので、この間一度も政権に加わらず、「確かな野党」として存在していた共産党が、反自民党層の受け皿としての求心力を高めたのではないか、というのが私の推測です。この参院選では、経済低迷下で消費税率を挙げたことなど、「経済失政」が反自民党層を拡大した、と言えそうです。

 なお、参院選比例区での得票率を見ると、1990年代になって共産党が支持を拡大したようにも解釈できるのですが、これは、社会党の退潮により反自民党層の中でも「左寄り」の層が共産党に流れてきたことが一因かもしれません。また、1989年の参院選では直前の天安門事件を根拠とした共産党へのネガティヴキャンペーンがかなり強力だったと記憶していますので、その効果が薄れてきた、ということも考えられます。このとき、自民党や公明党が反共産党キャンペーンに熱心だったと記憶していますが、当時中国共産党と良好な関係を築いていたのは自民党や公明党であり、日本共産党は文革以来中国共産党と断絶していたので、釈然としないというか、自民党と公明党への反感を強めたことを覚えています。

 社会党は、1989年の参院選で大勝し、1990年の衆院選でも「躍進」しました。1989年の参院選では、農業問題・消費税導入・リクルート事件などにより自民党への批判が高まり、自民党は惨敗しました。この時、反自民党層の受け皿として求心力を高めたのが社会党で、両方の選挙では野党で「独り勝ち」とも言える結果を残しました。しかし、社会党は反自民党層の多くが満足するような政治結果を残せず、没落していくことになりました(社会党は1970年代以前から衰退傾向にあったとは思いますが)。この点では、反自民党層の受け皿として期待され、政権奪取後の政権運営の失敗により没落した民主党とよく似ています。

 1989年の参院選のように、反自民党層が拡大しても、社会党のようにその受け皿として求心力の強い政党が存在すると、共産党はなかなか勢力を拡大できません。これは、1990年代前半に「政治改革」の気運が(マスコミの扇動もあって)盛り上がった時も同様だと思います。この時も、反自民党層が拡大したのでしょうが、日本新党・新政党などといった新たな諸政党が、反自民党層の受け皿として機能した結果、共産党は都議選や国政選挙で勢力を大きく伸ばすことはできませんでした。

 1998年の参院選後、民主党が自民党とともに二大政党の一方として成長することを期待されていき、反自民党層の受け皿として確たる基盤を築いていくとともに、共産党はしだいに選挙で退潮していったのではないか、というのが私の見通しです。民主党は2009年に政権を奪取した後、政権運営に失敗して支持を失ったものの、2010年の参院選ではなお、比例区で自民党を上回る得票率を得ており、この時にはみんなの党も反自民党層の受け皿として求心力が高かったため(みんなの党には都市部の「改革」志向層もかなり流れ込んだと思われます)、共産党の比例区での得票率は6.10%と過去最低に落ち込みました。

 この傾向は2012年の衆院選でも続きます。比例代表選での共産党の得票率は6.13%と過去最低に落ち込みました。民主党が大きく支持を失って大敗し、みんなの党は2010年の参院選の時と比較して勢いを失っていたとはいえ、日本維新の会が反自民党層の受け皿として機能したからだと思われます。日本維新の会には、都市部の「改革」志向層もかなり流れ込んだと思われます。また、民主党政権の失政により、反自民党層がやや縮小していたのかもしれません。

 投票時期が近接した2013年の都議選・参院選は、同じような政治状況下で行なわれた、と言えるでしょう。野党に転落した民主党はさらに支持を失い、みんなの党には2010年の参院選の時ほどの勢いはなく、日本維新の会も2012年の衆院選の時と比較すると大きく支持を失っていました。こうした状況下で、反自民党層が2005年~2012年の衆院選・参院選・都議選と比較して、共産党により多く流れ込んだのではないか、と思います。

 しかし、上述したように、2013年の都議選・参院選で共産党は「(その前の都議選・参院選と比較して)躍進」したとはいえ、1980年代以降では突出したものとは言えず、平凡なものと言えるでしょう。これは、上述した共産党支持層の高齢化による勢力縮小と関連しており、今後反自民党層の受け皿として他の政党が求心力を高めていけば、共産党は再び議席数を減らしていくのではないか、と私は予想しています。共産党の「基礎体力」は(日本社会全体の傾向以上の)高齢化により以前よりも低下しており、議席数の増加は他政党の失策・退潮に依存していますので、今後長期的には、社民党よりも緩やかとはいえ、同じように衰退していくものと思われます。

 民主党は一時よりも反自民党層の受け皿として求心力を高めているようですので、今後、自民党とともに二大政党の一方として復活することはないにしても、いわゆる55年体制での社会党と同程度の勢力まで復調する可能性はあるでしょう。ただ現時点では、2000年~2004年と比較しても、民主党は反自民党層の受け皿として強く機能しているとは言えないでしょうし、みんなの党は内紛・分裂の後に解党し、日本維新の会も分裂して維新の党となり、一時よりも明らかに反自民党層の受け皿としての求心力は低くなっていますから、来月(2014年12月14日)行なわれる衆院選でも共産党は「躍進」することでしょう。しかしそれは、現代日本社会において「右も左も極端化」しているからというよりは(そうした側面もあるのかもしれませんが)、共産党ではない非自民党系諸政党の、反自民党層の受け皿としての求心力が低いためではないか、と私は考えています。

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    Excerpt: 議席・得票数が確定したので、今回の衆院選について取り上げます。各党の確定議席数は以下の通りで、()は公示前の議席数です。 Weblog: 雑記帳 racked: 2014-12-16 00:00