キンシコウのゲノム解読

 中国の南西部と中央部に生息し、絶滅危惧種に指定されているキンシコウ(Rhinopithecus roxellana)のゲノム解読についての研究(Zhou et al., 2014)が公表されました。キンシコウはおもに葉や種子など消化しにくい植物を食べています。キンシコウの属するオナガザル科コロブス亜科は、ウシのような特化した複数の胃を持っており、この胃の中には、哺乳類が通常は消化できない植物化合物を分解する細菌が生息しています。この研究はキンシコウのゲノム解読により、キンシコウには他の霊長類と比較して毒性化合物を中和する唾液酵素をコードする遺伝子の数が多いことを明らかにしました。また、複数の胃を持つキンシコウとウシにおいて急速に進化した2000以上の遺伝子も同定された、とのことです。これらの遺伝子は、葉食に対する適応に関与した遺伝子候補である可能性が高いそうです。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


キンシコウのゲノム

 絶滅危惧種に指定されたキンシコウ(Rhinopithecus roxellana)のゲノム塩基配列が解読されたという報告が、今週のオンライン版に掲載される。この研究結果は、ヒト以外の霊長類の食性適応の解明を進めるものである。

 中国の南西部と中央部に生息するキンシコウは、オナガザル科コロブス亜科に属し、主に、葉、種子など消化しにくい食物を食べている。コロブス亜科のサルは、こうした食性に対する適応として、ウシに似て、特化した複数の胃を持っており、この胃の中には、哺乳類が通常、消化できない植物化合物を分解する細菌が生息している。

 今回、Ming Liたちは、キンシコウとその近縁種が、こうした特殊な食性に適応した過程をさらに解明するため、キンシコウのゲノムの塩基配列解読を行った。その結果、キンシコウは、他の霊長類と比べて、毒性化合物を中和する唾液酵素をコードする遺伝子の数が多いことが分かった。また、複数の胃を持つキンシコウとウシにおいて急速に進化した2,000以上の遺伝子も同定された。Liたちは、これらの遺伝子が、葉食に対する適応に関与した遺伝子候補である可能性が高いと述べている。

 さらに、Liたちがキンシコウの腸内細菌を調べたところ、細菌の種数はヒトに近いが、細菌型の構成はウシに近いことが判明した。



参考文献:
Zhou AR. et al.(2014): Whole-genome sequencing of the snub-nosed monkey provides insights into folivory and evolutionary history. Nature Genetics, 46, 12, 1303–1310.
http://dx.doi.org/10.1038/ng.3137

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック