蝶や蛾の幼虫の生存率の変化と幼鳥の学習の関係

 蝶や蛾の幼虫の生存率の変化と幼鳥の学習の関係についての研究(Mappes et al., 2014)が公表されました。蝶や蛾の幼虫には、派手な体色や模様のものと隠蔽色のものがいます。前者は自らが危険なことを捕食者に誇示することで生存率を高め、後者は背景に紛れ込むことで捕食者から発見される可能性を減少させるわけです。前者は、捕食者が派手な体色の意味を理解していることが前提となります。この研究は、派手な体色の幼虫の生存率が学習していない鳥類の最も少ない巣立ちの初期と末期に上昇した一方で、巣立ち期の最中には隠蔽色の幼虫の方が生存上有利なことを明らかにしています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【生態】チョウやガの幼虫の生存率の変化と幼鳥の学習の遅れ

 チョウやガの幼虫には、派手な体色や模様のものと隠ぺい色のものがいる。それぞれの生存率は、季節によって変化し、それが、幼鳥の学習と経験に依存していることを報告する論文が、今週、掲載される。この論文には、1年の特定の時期に派手な体色や模様の被食者の数が非常に少なくなる理由が捕食者の学習の遅れだとする考え方が示されている。

 さまざまなチョウ種の幼虫は、捕食を避けるために、背景に紛れ込み、あるいは、派手な「警告」シグナルを用いて自らが危険なことを捕食者となりうる生物に誇示できるように進化した。しかし、派手に誇示することは、捕食者がそうしたシグナルの意味を理解していることを前提としているため、危うい戦略と言える。

 今回、Johanna Mappesたちは、さまざまな色のチョウやガの幼虫の数が捕食者の幼鳥の数によって影響を受けるかどうかを調べた。幼鳥は、初めて巣を離れる時に、派手な体色の被食者が示す警告シグナルの意味を知らない。

 今回の研究では、派手な体色のチョウやガの幼虫の生存率が、学習していない鳥類が最も少ない巣立ちの初期と末期に上昇した一方で、巣立ち期の真っ最中には、隠ぺい色のチョウやガの幼虫の方が生存上有利なことが分かった。こうした個体数の季節変動パターンは、自然界のさまざまな色のチョウやガの幼虫に見られ、捕食者が生まれつき警告シグナルの意味を知らない場合に、その警告シグナルが長期間持続する理由となっている可能性がある。



参考文献:
Mappes J, Kokko M, Ojala K, and Lindström L.(2014): Seasonal changes in predator community switch the direction of selection for prey defences. Nature Communications, 5, 5016.
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms6016

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