人間の顔の多様性

 人間の顔の多様性に関する研究(Sheehan, and Nachman., 2014)が報道されました。この研究は、顔の特徴と体形質の測定指標を用いて、一般に顔が手などその他の特徴よりも形状の多様性がはるかに高いことを明らかにしました。またこの研究は、アフリカ系とヨーロッパ系の人々の大型の遺伝子データセットの解析も行ない、顔の特徴に関連するゲノム領域の多様性が高いことを示す証拠が得られた、とのことです。このことから、顔の形質の多様性の高さを維持するために選択圧が働いていたのではないか、と示唆されています。また、この特定のゲノム領域がネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)のそれと類似しており、こうした多様性が現生人類(Homo sapiens)出現前から存在していたことが示唆されていることも、注目されます。ネアンデルタール人と現生人類の共通祖先が存在していた段階で、人類がどの程度の規模の集団を形成していたのか、推測するのはひじょうに困難なのですが、その時点で一定以上の規模だったのかもしれません。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【進化】大勢の人の中から目的の顔を見つける

 ヒトの顔に個性が生まれたのは、複雑な社会集団における人違いを避けるためだったという考え方を示した新しい論文が掲載される。

 ヒトには、大規模な社会集団を構成するさまざまな人々を見分けるという注目すべき能力がある。その一因は、顔の特徴が千差万別である点で、ヒトの顔は、大集団で生息する他の動物種より多様性が高い。

 今回、Michael SheehanとMichael Nachmanは、顔の特徴と体形質の測定指標を用いて、顔が、一般に、手などその他の特徴よりも形状とレイアウトの多様性がはるかに高いことを明らかにした。今回の研究では、アフリカ系とヨーロッパ系の人々の大型の遺伝子データセットの解析も行われ、顔の特徴に関連するゲノム領域の多様性が高いことを示す証拠が得られた。この新知見は、顔の形質の多様性の高さを維持するために選択圧が働いていることを示唆しており、顔の個性のための進化的選択を示している。

 また、この特定のゲノム領域は、ネアンデルタール人のものと類似しており、この多様性が、現生人類が登場する前から存在していたことが示唆されている。



参考文献:
Sheehan MJ, and Nachman MW.(2014): Morphological and population genomic evidence that human faces have evolved to signal individual identity. Nature Communications, 5, 4800.
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms5800

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