現代ヨーロッパ人の起源

 現代ヨーロッパ人の起源についての研究(Lazaridis et al., 2014)が報道されました。この研究は、ドイツで発見された7000年前以降の農耕民1人と、ルクセンブルクおよびスウェーデンの8000年前以降の採集狩猟民8人のゲノムを配列し、2345人の現代人と共に分析しました。その結果、現代ヨーロッパ人はおもに3系統に由来していることが明らかになりました。その3系統とは、

(1)西ヨーロッパの狩猟採集民。全ヨーロッパ古代人の祖先ですが、近東人の祖先ではありません。

(2)古代北部ユーラシア人。上部旧石器時代シベリア人と遺伝的に近縁で、ヨーロッパ人および近東人の祖先(の一部)でもあります。

(3)初期ヨーロッパ農耕民。おもに近東起源ですが、西ヨーロッパの狩猟採集民の祖先集団とも関連しています。

です。また、初期ヨーロッパ農耕民の祖先の約44%は、他の非アフリカ系統の多様化の前に分岐した「基部ユーラシア人」集団に由来する、とも推定されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


進化:古代人ゲノムは、現代ヨーロッパ人が3つの祖先集団に由来することを示唆している
人種のるつぼだった古代ヨーロッパ:現生ヨーロッパ人の3つの祖先集団
 ヨーロッパでは8000年前から7000年前にかけて農業への移行が起こったが、この1000年間をつなぐように生存していたと思われる古代ヨーロッパ人9個体のゲノムの塩基配列の解読と比較が、D Reichたちによって行われた。彼らは、現生ヨーロッパ人の大部分が、少なくとも3つの高度に分化した集団、すなわち、西ヨーロッパ狩猟採集民、古代北ユーラシア人(後期旧石器時代のシベリア人に遺伝学的に近縁)、および主に近東起源の初期ヨーロッパ農耕民に由来していることを明らかにしている。さらに、初期ヨーロッパ農耕民の祖先の約44%は、他の非アフリカ人系統が多様化する前に分岐した「基部系統ユーラシア人」集団に由来すると、彼らは考えている。これらの結果は、近東人農耕民とヨーロッパ狩猟採集民の混血が、いつ、どこで起こり、結果として初期ヨーロッパ農耕民が生じたのかという問題など、新たな疑問を投げかけている。



参考文献:
Lazaridis I. et al.(2014): Ancient human genomes suggest three ancestral populations for present-day Europeans. Nature, 513, 7518, 409–413.
http://dx.doi.org/10.1038/nature13673

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