徳永勝士「ゲノム全域の多様性解析からみえる人類移動」『人類の移動誌』第5章第4節

 今日はもう1本掲載します。印東道子編『人類の移動誌』初版第2刷(関連記事)所収の論文です。本論文は、技術革新によりヒトゲノム全域の多様性解析と多数の個体の解析が可能になったことで、じゅうらいよりも格段に精度の高い分析が可能になった、と指摘します。こうした研究は近年になって世界各地で進められており、続々と研究成果が公表されつつあります。日本列島における人類集団の形成についても、ゲノム全域を用いた研究が進められており、先住の縄文人と後に渡来してきた弥生文化の担い手との融合によるという「二重構造モデル」が改めて支持されました。

 人間の身近な疾患や形質に関わる遺伝子の探索も進められており、そこから毛髪の太さに関わる遺伝子も特定されました。ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)やデニソワ人(種区分未定)といった絶滅古人類のゲノム解析も進められており、現生人類(ホモ=サピエンス)がネアンデルタール人やデニソワ人から免疫系遺伝子を継承した可能性が高いことを指摘した研究も紹介されています。この分野は、今後の急速な発展が見込まれているだけに、大いに注目されます。


参考文献:
徳永勝士(2014)「ゲノム全域の多様性解析からみえる人類移動」印東道子編『人類の移動誌』初版第2刷(臨川書店)第5章「移動を検証する多様な技術」第4節P308-314

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