総合討論「人類は移動する動物なり」『人類の移動誌』第6章

 印東道子編『人類の移動誌』初版第2刷(関連記事)所収の総合討論です。この総合討論は、「人はどのようなときに移動するのか」・「人の移動を支えるもの」・「人にとって移動とは何か」の3部構成となっています。総合討論ということもあり、一つの結論に収束するとか、整然と見解が主張されているとかいうわけではなく、多様な論点が提起され、それに関してしばしば相互に対立的な見解が主張されています。表題では「人類は移動する動物なり」となっていますが、この総合討論を読むと、人類は消極的に移動することも積極的に移動することも、一定の範囲内に留まろうとすることもあり、移動に関して人類の考えは集団・個人間で多様なのだな、と思います。

 この総合討論の全体的な特徴として、移動などの点で「新人」と「旧人」など他の人類との違いを強調していることが挙げられます。移動範囲のみならず、新たな環境への適応という点でも、「新人」と他の人類とでは大きな違いがある、というわけです。この違いが何に起因するのかというと、大問題なのでこの総合討論でも結論は出ていないわけですが、潜在的(遺伝的)要因もあるものの、「新人」も出現後すぐに広範な地域に拡散したわけではないことから、人口規模もかなり重要なのではないかな、と思います。


参考文献:
総合討論(2014)「人類は移動する動物なり」印東道子編『人類の移動誌』初版第2刷(臨川書店)第5章「移動を検証する多様な技術」第節P336-359

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