井上寿一『第一次世界大戦と日本』
講談社現代新書の一冊として、講談社より2014年6月に刊行されました。本書は、第一次世界大戦が日本に及ぼした影響と、その前後の期間の日本の変容について、外交・軍事・政治・経済・社会・文化の観点から解説しています。最初に本書は、日本では第一次世界大戦の当事者意識が乏しい、と指摘しています。これはもっともな指摘ですが、国内が戦場になったわけではなく、戦闘の規模が日清戦争と比較しても大きくなく、実質的な戦闘期間も短かったことから、仕方のないところもあると言えるでしょう。
本書は、第一次世界大戦が外交の在り様を秘密主義から原則公開へと変え、そうしたことや労働環境改善の動きも含めて、世界的にデモクラシー化を進め、日本もその影響を受け、そうした風潮を読み取ってエリートたちが行動していったことを指摘しています。しかし一方で、外交のデモクラシー化は外交に「民意」を反映することをも意味し、それが外交官の活動を制約するものになっていったことも、本書は指摘しています。その結果として、満洲事変後の「強硬な世論」という「逆風」下では、第一次世界大戦後の「国際協調」の潮流のなかで奮闘してきた日本の外交官は苦境に立たされます。
ただ、気になるのは、第一次世界大戦後~満州事変の頃までの日本の風潮を解説するにあたって、本書は国際協調・デモクラシー化を強調しすぎているのではないか、ということです。後の満州事変~敗戦にいたるまでの経緯との対照性を意識してのことなのかもしれませんが、本書では、国際協調・デモクラシー化が日本社会において挫折していく経緯の解説が充分ではない、と思います。本書の主題からして、第一次世界大戦の日本への影響ということで、国際協調・デモクラシー化が強調されたのも仕方のないところかもしれませんが、やや残念な感は否めません。
本書は、第一次世界大戦が外交の在り様を秘密主義から原則公開へと変え、そうしたことや労働環境改善の動きも含めて、世界的にデモクラシー化を進め、日本もその影響を受け、そうした風潮を読み取ってエリートたちが行動していったことを指摘しています。しかし一方で、外交のデモクラシー化は外交に「民意」を反映することをも意味し、それが外交官の活動を制約するものになっていったことも、本書は指摘しています。その結果として、満洲事変後の「強硬な世論」という「逆風」下では、第一次世界大戦後の「国際協調」の潮流のなかで奮闘してきた日本の外交官は苦境に立たされます。
ただ、気になるのは、第一次世界大戦後~満州事変の頃までの日本の風潮を解説するにあたって、本書は国際協調・デモクラシー化を強調しすぎているのではないか、ということです。後の満州事変~敗戦にいたるまでの経緯との対照性を意識してのことなのかもしれませんが、本書では、国際協調・デモクラシー化が日本社会において挫折していく経緯の解説が充分ではない、と思います。本書の主題からして、第一次世界大戦の日本への影響ということで、国際協調・デモクラシー化が強調されたのも仕方のないところかもしれませんが、やや残念な感は否めません。
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