大河ドラマ『軍師官兵衛』第32回「さらば、父よ!」

 まだ日付は変わっていないのですが、8月11日分の記事として掲載しておきます。今回は、秀吉と織田信雄・徳川家康の対立過程に関する説明がなく、いきなり小牧長久手の戦いから始まります。官兵衛が毛利家との領地交渉のため陣に不在のなか、秀吉は小牧長久手の戦いで家康に敗れますが、外交で巻き返し、天下人としての地位を固めていきます。小牧長久手の戦いも山崎・賤ヶ岳と同じく駆け足でした。山崎の時も賤ヶ岳の時も合戦が駆け足でも問題はない、と述べてきましたが、合戦が駆け足のみならず、対立過程も省略されるとなると、さすがにどうかと思います。まあ合戦については、石垣原の戦いがしっかりと描かれればそれでよいかな、とも思いますが。

 毛利家との領地交渉では、地侍の扱いの難しさに言及されていました。後に豊前に転封となった時の在地領主との対立の伏線ということなのでしょう。黒田家は新たに与えられた播磨の山崎に移り、官兵衛は四国攻めに備え、長政に留守を任せます。官兵衛は大坂城に赴き、秀吉・千宗益・三成と茶室で会談します。その場で官兵衛は、秀吉が関白に任官予定であることと、四国攻めよりも前に徳川家を攻める予定であることを伝えられます。徳川家を先に攻めるよう進言したのは三成でした。官兵衛は千宗益から、三成の権勢が増していることと、秀吉が茶々に執心していることを聞きます。秀吉は茶々を「第二の正室」にしようとしますが、秀吉を両親の仇と恨む茶々は承服しません。その茶々を、一生日陰者でよいのか、と三成は説得します。

 秀吉の正妻の「おね」は、三成を重用して官兵衛を遠ざける秀吉に諫言します。秀吉は「おね」に、官兵衛は先が見えすぎる、と言って官兵衛への警戒心を打ち明けます。官兵衛は大坂城で、秀吉の御伽衆に取り立てられた道薫(荒木村重)と遭遇します。村重は官兵衛に、秀吉は変わったと思わないか、と官兵衛に忠告めいたことを言います。官兵衛は秀吉に謁見し、家康と戦う理由を尋ねます。秀吉は、上洛命令に従わない家康を放置しておくわけにはいかない、と言い、三成は、家康には天下への野心がある、と家康への警戒心を隠しません。官兵衛は、兵を無駄に死なせるわけにはいかない、徳川家は結束力が強いのに(急成長した)羽柴家はまだ結束が固まっていない、と言って徳川家を攻めることに反対します。官兵衛は、四国と九州を平定すれば家康は臣従してくる、とあくまでも徳川家を攻めることに反対し、三成と言い争いになります。秀吉は自らの間違いを認め、官兵衛の進言を受け入れます。しかし、秀吉の表情には含むところがあるようです。

 新たな所領の統治を任された長政は、領民の反抗的な姿勢に苦労していました。長政が領民に不満があるのか問い質すと、領地の整備や年貢の増徴などで生活が苦しい、と領民は訴えます。この時、長政は父の官兵衛を侮辱され激昂して刀を抜いてしまい、領民の不満はますます高まります。善助・太兵衛・又兵衛は長政を案じて職隆に相談し、職隆は長政に統治の要を説き聞かせます。職隆は官兵衛に、長政を気遣うようそれとなく諭します。官兵衛は、領民との話し合いで刀を抜いてしまった長政を叱責し、長政は自分の非を認めます。羽柴軍は四国に攻め入り、官兵衛は先鋒として活躍し、その間に秀吉は関白に任官します。播磨の情勢も落ち着き、黒田家も安泰と皆が感じるようになってきたなか、職隆が静かに息を引き取ります。

 今回は、「さらば、父よ!」との題のわりには、職隆がさほど目立ったわけではなく、秀吉と官兵衛との緊張関係・対立が深まっていく様が、家康・三成・茶々も絡めて描かれました。官兵衛と秀吉が対立していく様は、なかなか丁寧に描かれているので、これでよいと思います。これに、官兵衛と未熟な長政との関係も重要な軸として描かれており、なかなか盛り込まれていました。その分、上述したように、秀吉と信雄・家康との戦いどころか、対立していく様子さえ描かれなかったことなど、犠牲になった事柄もあるわけですが、官兵衛と秀吉との関係が今後の主軸になるのだとしたら、今回の描き方でも大きな問題はないだろう、と思います。不満もありますが、今回も楽しめました。村重の謀反のあたりからは、安定してなかなか面白いと思います。

この記事へのコメント

ひろし
2014年08月14日 14:54
う~~~ん
今回はちょっとイマイチでしたね。
肝心のサブタイどおりの内容は、最後の方でしか映らなかったのが残念。
主人公の父が亡くなる回なのに、とても期待外れでした。

まずは冒頭。
なんの説明もなく、いきなり秀吉と信雄・家康が戦いを始めているの所で、困惑・混乱しました。
これは予備知識がないと分からない内容で、脚本に問題があります。
今年の大河の根本的な問題だと思います(総評で詳しく語ります)。
こう言う大事な部分は、視聴者にも分かる様に説明しないといけませんし、その分、無駄な場面が多いことが、今年の大河の最大の欠点だと思います。

職隆は、今年の大河で数少ない魅力のある人物だったので、もうちょっとマシな退場回にして欲しかったです。
余り感動が感じられなかったのが、なんとも惜しいです。もったいない。
演じた柴田恭兵さん、お疲れ様でした。
今度はもっとマシな作品に出演して下さい。

戦などの視覚的見せ場は薄く、主人公周りの心理描写はなかなか見ごたえがあり、
力入れているがイマイチなホームドラマシーン...
どうも総合的に微妙でイマイチです(汗)。

視聴率は16.1と下がり、最近では上がったり下がったりの繰り返しで、現時点の平均は16%台。
裏番組が影響されてるからか?

それでは~
2014年08月14日 23:40
合戦場面の省略のみならず、その過程の説明不足も目立ちますね。

予算の都合もあるのでしょうが、対立の過程はもう少し丁寧に描いてほしいな、とは思います。

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