ジャワのエレクトスをめぐる研究動向
人類の進化についてもう6年以上、基本的にはこのブログで個別の研究を取り上げてきただけなので、そろそろある程度まとめも進めて、諸見解を整理していこう、と考えています。そうした意図から、まずアメリカ大陸への人類の移住をめぐる研究動向についてまとめ(関連記事)、次にドマニシ人をめぐる研究動向についてまとめてみました(関連記事)。今回は、おもにこのブログで取り上げたジャワ島のホモ=エレクトスをめぐる研究動向についてまとめてみます。ただ、改めて過去の関連記事を調べてみると、ここ数年はジャワのエレクトスに関する研究を取り上げることが少なくなっており、もっと調べなければいけないな、と思った次第です。
ジャワのエレクトスについてまず議論になりそうなのが、その年代です。ジャワのエレクトスは180万年前頃までさかのぼる、という見解は一般にもそれなりに浸透しているように思います。これはアフリカの初期エレクトス(他地域・後代のエレクトスと区別してエルガスターと分類する見解もあります)の年代とほぼ同じであるため、エレクトスがアフリカ外で進化したのではないか、との見解も成立し得ると言えるかもしれません。しかし、発見時の状況から、ジャワのエレクトスのそうした年代には疑問が呈されてきました(関連記事)。
ジャワのサンギラン地域のエレクトスの下限年代を79万年前頃と推定した研究でも、150万年前よりもさかのぼるとされるジャワのエレクトスの年代について、再検証が必要であり、ずっと新しくなりそうだ、と指摘されています(関連記事)。そうだとすると、エレクトスがアフリカ外の地域(たとえばジャワも含む東南アジア)で進化したとか、アフリカで誕生したエレクトスが短期間で東南アジアまで進出した、とかいった想定はしなくてもよいことになりそうです。
ジャワのエレクトスがいつまで生存していたのか、という問題についても、研究の蓄積が進んでいるようです。ジャワのソロ人の年代は55万~15万年前頃(関連記事)、ジャワ中部のンガンドンとサンブンマチャンで発見された後期エレクトスの年代は、上限が7万~6万年前頃、下限が4万年前頃とされています(関連記事)。そうすると、5万年前頃の東南アジアには、エレクトスと更新世フローレス島人(ホモ=フロレシエンシス)と現生人類(ホモ=サピエンス)という少なくとも3系統の人類が存在していた可能性が高いことになります。また、ジャワのエレクトスは、74000年前頃のスマトラ島のトバ山大噴火でも絶滅しなかったことになります。
ジャワのサンギラン・トリニール・サンブンマチャン・ンガンドンから出土した18の成人頭蓋の分析からは、ジャワのエレクトスの頭蓋には特殊化の進展が見られ、それは継続的・漸進的だった、との見解が提示されています(関連記事)。これは、現生人類のアフリカ単一起源説と整合的だと言えますが、一方で、ジャワのエレクトス系統は現代人の祖先に(遺伝的に)重要な影響を与えることなく絶滅した、と慎重な表現での指摘になっています。現時点では、現生人類とジャワのエレクトスとの交雑の決定的証拠は検出されていませんが、その可能性はそれなりにあるように思います。
エレクトスがジャワに進出した年代については、上述したように、180万年前頃とする早期説と、それを疑問視する見解とが提示されています。最初期更新世のジャワの環境は、開けた森林地帯をともなう高低差がなく湿気の多い草原と推定されており、それはエレクトスの故郷であるアフリカでも珍しくなかったでしょう(関連記事)。その意味では、早期説が成立する余地もありそうです(アフリカからジャワまでの間にも、似たような環境が続いていたのでしょう)。初期更新世を通じての長期の傾向として、乾季の期間が長くなるなど、ジャワの気候は乾燥化していったのではないか、と推測されています(関連記事)。
ジャワのエレクトスには石器が共伴しないと長らく言われてきましたが、近年の研究によると、共伴すると報告されているそうです(関連記事)。ジャワも含む旧スンダランド地域で発見される「段階II」以前の石器群は、チョッパーやチョッピングトゥールが主体的で、技術的に特徴をとらえにくいものが多く、120万年前頃とか70万年前頃とかいった推定年代も確定的ではない、と指摘されています(関連記事)。また、「段階III」となるルヴァロワ技術が見られる、との報告もあるそうですが、こちらも偶然の産物の可能性が指摘されています(関連記事)。
ジャワも含む東南アジア島嶼部の石器で興味深いのは、現生人類の石器と、エレクトスなど他系統の人類の所産と考えられる石器とを、技術的に明確に区分しにくい、ということです(関連記事)。このように「考古学的連続性」とも解釈できる事象は、現生人類多地域進化説の根拠の一つとされています。今後の課題は、そうした事象が、本当に石器製作技術の連続性を示しているのか、そうだとして、それは東南アジア島嶼部の人類集団の継続性を示しているのか、それとも後発集団たる現生人類と先住集団たるエレクトスとの間の(多少の交雑も含みつつの)交流によるものなのか、あるいは、石材や食資源など環境に適応して偶然類似しているように見えるだけなのか、さまざまな可能性を検証していくことでしょう。
ジャワのエレクトスについてまず議論になりそうなのが、その年代です。ジャワのエレクトスは180万年前頃までさかのぼる、という見解は一般にもそれなりに浸透しているように思います。これはアフリカの初期エレクトス(他地域・後代のエレクトスと区別してエルガスターと分類する見解もあります)の年代とほぼ同じであるため、エレクトスがアフリカ外で進化したのではないか、との見解も成立し得ると言えるかもしれません。しかし、発見時の状況から、ジャワのエレクトスのそうした年代には疑問が呈されてきました(関連記事)。
ジャワのサンギラン地域のエレクトスの下限年代を79万年前頃と推定した研究でも、150万年前よりもさかのぼるとされるジャワのエレクトスの年代について、再検証が必要であり、ずっと新しくなりそうだ、と指摘されています(関連記事)。そうだとすると、エレクトスがアフリカ外の地域(たとえばジャワも含む東南アジア)で進化したとか、アフリカで誕生したエレクトスが短期間で東南アジアまで進出した、とかいった想定はしなくてもよいことになりそうです。
ジャワのエレクトスがいつまで生存していたのか、という問題についても、研究の蓄積が進んでいるようです。ジャワのソロ人の年代は55万~15万年前頃(関連記事)、ジャワ中部のンガンドンとサンブンマチャンで発見された後期エレクトスの年代は、上限が7万~6万年前頃、下限が4万年前頃とされています(関連記事)。そうすると、5万年前頃の東南アジアには、エレクトスと更新世フローレス島人(ホモ=フロレシエンシス)と現生人類(ホモ=サピエンス)という少なくとも3系統の人類が存在していた可能性が高いことになります。また、ジャワのエレクトスは、74000年前頃のスマトラ島のトバ山大噴火でも絶滅しなかったことになります。
ジャワのサンギラン・トリニール・サンブンマチャン・ンガンドンから出土した18の成人頭蓋の分析からは、ジャワのエレクトスの頭蓋には特殊化の進展が見られ、それは継続的・漸進的だった、との見解が提示されています(関連記事)。これは、現生人類のアフリカ単一起源説と整合的だと言えますが、一方で、ジャワのエレクトス系統は現代人の祖先に(遺伝的に)重要な影響を与えることなく絶滅した、と慎重な表現での指摘になっています。現時点では、現生人類とジャワのエレクトスとの交雑の決定的証拠は検出されていませんが、その可能性はそれなりにあるように思います。
エレクトスがジャワに進出した年代については、上述したように、180万年前頃とする早期説と、それを疑問視する見解とが提示されています。最初期更新世のジャワの環境は、開けた森林地帯をともなう高低差がなく湿気の多い草原と推定されており、それはエレクトスの故郷であるアフリカでも珍しくなかったでしょう(関連記事)。その意味では、早期説が成立する余地もありそうです(アフリカからジャワまでの間にも、似たような環境が続いていたのでしょう)。初期更新世を通じての長期の傾向として、乾季の期間が長くなるなど、ジャワの気候は乾燥化していったのではないか、と推測されています(関連記事)。
ジャワのエレクトスには石器が共伴しないと長らく言われてきましたが、近年の研究によると、共伴すると報告されているそうです(関連記事)。ジャワも含む旧スンダランド地域で発見される「段階II」以前の石器群は、チョッパーやチョッピングトゥールが主体的で、技術的に特徴をとらえにくいものが多く、120万年前頃とか70万年前頃とかいった推定年代も確定的ではない、と指摘されています(関連記事)。また、「段階III」となるルヴァロワ技術が見られる、との報告もあるそうですが、こちらも偶然の産物の可能性が指摘されています(関連記事)。
ジャワも含む東南アジア島嶼部の石器で興味深いのは、現生人類の石器と、エレクトスなど他系統の人類の所産と考えられる石器とを、技術的に明確に区分しにくい、ということです(関連記事)。このように「考古学的連続性」とも解釈できる事象は、現生人類多地域進化説の根拠の一つとされています。今後の課題は、そうした事象が、本当に石器製作技術の連続性を示しているのか、そうだとして、それは東南アジア島嶼部の人類集団の継続性を示しているのか、それとも後発集団たる現生人類と先住集団たるエレクトスとの間の(多少の交雑も含みつつの)交流によるものなのか、あるいは、石材や食資源など環境に適応して偶然類似しているように見えるだけなのか、さまざまな可能性を検証していくことでしょう。
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