印東道子「海域世界への移動戦略」『人類の移動誌』第4章「アメリカ大陸・オセアニアへ」第3節

 印東道子編『人類の移動誌』初版第2刷(関連記事)所収の論文です。本論文はオセアニアへの人類の移住について概観しています。ニア・オセアニアへの人類の移住は古く、50000~40000年前頃までさかのぼりそうです。この最初の移住の時期は、現在よりも海水面が低く、スンダランドからサフルランドも含むニア・オセアニアまで、海上移動の距離が現在よりも短かったのが特徴となっています。これにたいして、5000~3000年前頃に行なわれたリモート・オセアニアへの移動は、海上移動の距離が長いのが特徴でした。航海技術の発達がその前提としてあるようです。

 リモート・オセアニアへの移動は一気に行なわれたのではありませんでした。人類は3000年前頃にトンガとサモアにまで進出した後2000年ほど移動を中断し、その後により遠方へと再び移動を開始し、ハワイやイースター島やニュージーランドにまで到達しました。本論文はこうした移住の要因を受動型・積極型・偶発型の3類型に区分しています。受動型は、人口増や自然災害や戦争などにより、故地より押し出されるように移動する場合です。積極型は、移動先の資源などの魅力に引き寄せられたり好奇心によったりして移動する場合です。偶発型は漂流のような場合ですが、移動元へと帰ることができれば、新たな移住の前提となります。


参考文献:
印東道子(2014)「海域世界への移動戦略」印東道子編『人類の移動誌』初版第2刷(臨川書店)第4章「アメリカ大陸・オセアニアへ」第3節P232-245

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