篠田謙一「DNAから追及する新大陸先住民の起源」『人類の移動誌』第4章第2節

 印東道子編『人類の移動誌』初版第2刷(関連記事)所収の論文です。本論文は、アメリカ大陸への人類最初の移住というたいへん関心の高い問題についての遺伝学的研究を取り上げています。本論文で指摘されているのは、15世紀末以降、アメリカ大陸へヨーロッパから多くの人間が移住してきた影響です。これにより、アメリカ大陸先住民とはいっても、程度の差はあれヨーロッパ系の遺伝子を継承している人が多くなります。そうした問題点も指摘しつつ、本論文は近年の遺伝学的研究成果を簡潔に概観しており、この問題について把握するのに有益だと思います。

 遺伝学的研究からは、ベーリンジア隔離(潜伏)モデルが提唱されており、ユーラシア大陸北東部からベーリンジアに進出した人類は、36000~16000年前頃に、ベーリンジアで隔離されて生活していた、と想定されています。アメリカ大陸への進出にさいしての移住経路については、遺伝学的研究でも、近年有力視されつつある沿岸移住仮説(人類は北アメリカ大陸北西岸を経由してアメリカ大陸へ進出した、とする仮説)と整合的な研究が紹介されています。アメリカ大陸への人類最初の進出という問題に関しては、最近このブログで取り上げました(関連記事)。


参考文献:
篠田謙一(2014)「DNAから追及する新大陸先住民の起源」印東道子編『人類の移動誌』初版第2刷(臨川書店)第4章「アメリカ大陸・オセアニアへ」第2節P219-231

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