ネアンデルタール人は煮炊きをしていた?

 ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)は煮炊きをしていた、との見解が報道されました。この見解は、先月のアメリカ考古学協会の年次総会で報告されたそうです。もちろん、ネアンデルタール人が土器を製作していた証拠はないわけで、それはおそらく今後も変わらないでしょう。この見解によると、ネアンデルタール人の遺跡で発見された骨・槍・食物の痕跡などから、ネアンデルタール人は革袋や樹皮のトレーといった道具で煮炊きを行っていた可能性が高い、とのことです。樹皮や皮革は燃えやすいのですが、その発火点よりも低い温度で水が沸騰することを巧みに利用したのではないか、というわけです。

 すでに、ネアンデルタール人が20万年前頃より槍先に石器を装着するさいに樹木由来のタールを使用していたことが明らかになっており、樹木からタールを採るには、酸素に触れないよう容器に入れて加熱する高度な技術が必要だとされています。また、ネアンデルタール人の遺跡で発見された動物の骨のうち98%には、腐食動物の噛み跡が見られませんでした。これは、調理によって脂肪分がきれいに取り除かれていたことを意味するのではないか、というわけです。ネアンデルタール人の離乳時期は現生人類(ホモ=サピエンス)よりも早かったと推測されていることからも(関連記事)、食物は消化しやすいように煮炊きされていたのではないか、とこの見解では主張されています。

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