アメリカ大陸最古級の人骨の形態とミトコンドリアDNA(追記有)

 アメリカ大陸最古級の人骨の形態とミトコンドリアDNAについての研究(Chatters et al., 2014)が報道されました。この研究は、メキシコのユカタン半島東部の地底湖で発見された15~16歳と推定される少女のほぼ完全に近い人骨の形態を分析・比較し、さらにミトコンドリアDNAの解析にも成功しています。この人骨は暦年代で13000~12000年前と推定されています。また、この人骨には絶滅動物の骨も共伴していた、とのことです。

 アメリカ大陸先住民の起源で問題とされてきたのは、更新世後期の最初期のアメリカ人の頭蓋顔面形態および歯列が、現在のアメリカ大陸先住民のそれとは異なる、ということです。また、現在のアメリカ大陸先住民の祖先集団は東アジア起源と推測されているのに、最初期のアメリカ人の形態は東アジア人と似ていない、とも指摘されています。そのため、最初期のアメリカ人と現在のアメリカ大陸先住民の起源は異なるのではないか、とも言われていました。しかしこの研究では、13000~12000年前のユカタン半島東部の人骨は、頭蓋顔面の特徴では既知の最初期のアメリカ人と類似している一方で、ミトコンドリアDNAでは現在のアメリカ大陸先住民で一般的に見られるハプログループD1を有することが明らかにされました。

 その結果、最初期のアメリカ人と現在のアメリカ大陸先住民はその起源が異なるのではなく、現在のアメリカ大陸先住民の解剖学的特徴はアメリカ大陸において独自に進化したのだろう、とこの研究では結論づけられています。この問題については、昨年公表されたアメリカ大陸先住民の遺伝的起源に関する研究(関連記事)が参考になりそうです。その研究では、アメリカ大陸先住民の祖先集団は、東アジア人の祖先集団と分岐した後に、シベリアのどこかで西ユーラシア起源の集団と遭遇して融合し、アメリカ大陸へと進出したのではないか、と推測されています。最初期のアメリカ人の形態が東アジア人とも現代のアメリカ先住民とも似ていないのは、そのためなのではないか、というわけです


参考文献:
Chatters JC. et al.(2014): Late Pleistocene Human Skeleton and mtDNA Link Paleoamericans and Modern Native Americans. Science, 344, 6185, 750-754.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1252619


追記(2014年5月19日)
 ナショナルジオグラフィックでも報道されました。

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