石器時代スカンジナビアの狩猟採集民と農耕民との遺伝的差異
石器時代のスカンジナビアの狩猟採集民と農耕民の遺伝的差異についての研究(Skoglund et al., 2014)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究は、7000~5000年前のスカンジナビアの住民11人のゲノムを解析し、狩猟採集から農耕への移行は人口構造的にはどのように進行したのかという、現在でも議論の盛んな問題への手がかりを提示しています。この研究のゲノム解析の結果はこの時代のものとしてはかなり良好だったようで、何人かではドラフトゲノムと同等のものが得られたそうです。
ゲノム解析・比較の結果、狩猟採集民と農耕民は、地理的に近接していたにも関わらず、現代ヨーロッパ人間で観察されるよりも遺伝的差異が大きかったそうです。さらに、遺伝的に農耕民と位置づけられる有名な「アイスマン」と比較して、スカンジナビアの新石器時代農耕民には狩猟採集民との交雑の程度が高かったことが確認されたそうです。一方対照的に、スカンジナビアの狩猟採集民には、農耕民からの遺伝子流入の有意な証拠がまったく見られなかったそうです。
この研究は、スカンジナビアの狩猟採集民は農耕民よりもずっと遺伝的多様性が低いことから、石器時代の狩猟採集民は生活条件の変動または環境収容力の制限から農耕民よりも人口が少なく、少なくともその一部は、拡大していく農耕集団に吸収されたのではないか、と示唆しています。この論文の筆頭著者のポンタス=スコグランド(Pontus Skoglund)博士は、世界各地の農耕の拡大に関する研究にさいして、この研究が手がかりになるかもしれない、と述べています。
この研究は、スカンジナビアの古代人の大規模なゲノムを調査するアトラス計画の最初の成果とのことです。現時点での証拠からすると、おそらく世界の複数の地域で農耕が独自に始まり、その周辺地域に拡散していったものと思われます。農耕拡散の様相は、もちろん世界各地でそれぞれ異なっていたでしょうが、この研究で推測されたスカンジナビアのような事例は、珍しくなかっただろう、と思います。低緯度地域ではなかなか難しいかもしれませんが、ある程度以上の高緯度地域では、この問題への遺伝学の貢献が期待できるでしょう。
参考文献:
Skoglund P. et al.(2014): Genomic Diversity and Admixture Differs for Stone-Age Scandinavian Foragers and Farmers. Science, 344, 6185, 747-750.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1253448
ゲノム解析・比較の結果、狩猟採集民と農耕民は、地理的に近接していたにも関わらず、現代ヨーロッパ人間で観察されるよりも遺伝的差異が大きかったそうです。さらに、遺伝的に農耕民と位置づけられる有名な「アイスマン」と比較して、スカンジナビアの新石器時代農耕民には狩猟採集民との交雑の程度が高かったことが確認されたそうです。一方対照的に、スカンジナビアの狩猟採集民には、農耕民からの遺伝子流入の有意な証拠がまったく見られなかったそうです。
この研究は、スカンジナビアの狩猟採集民は農耕民よりもずっと遺伝的多様性が低いことから、石器時代の狩猟採集民は生活条件の変動または環境収容力の制限から農耕民よりも人口が少なく、少なくともその一部は、拡大していく農耕集団に吸収されたのではないか、と示唆しています。この論文の筆頭著者のポンタス=スコグランド(Pontus Skoglund)博士は、世界各地の農耕の拡大に関する研究にさいして、この研究が手がかりになるかもしれない、と述べています。
この研究は、スカンジナビアの古代人の大規模なゲノムを調査するアトラス計画の最初の成果とのことです。現時点での証拠からすると、おそらく世界の複数の地域で農耕が独自に始まり、その周辺地域に拡散していったものと思われます。農耕拡散の様相は、もちろん世界各地でそれぞれ異なっていたでしょうが、この研究で推測されたスカンジナビアのような事例は、珍しくなかっただろう、と思います。低緯度地域ではなかなか難しいかもしれませんが、ある程度以上の高緯度地域では、この問題への遺伝学の貢献が期待できるでしょう。
参考文献:
Skoglund P. et al.(2014): Genomic Diversity and Admixture Differs for Stone-Age Scandinavian Foragers and Farmers. Science, 344, 6185, 747-750.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1253448
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