新たな分析法により改めて確認されたネアンデルタール人と現生人類との交雑

 新たな遺伝学的分析法により、ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)と現生人類(ホモ=サピエンス)との交雑を改めて確認した研究(Lohse, and Frantz., 2014)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。2010年以降、ネアンデルタール人と現生人類との交雑を認める見解が、遺伝学の分野では主流になっています。しかし、その根拠となっているネアンデルタール人と非アフリカ系現代人との間の(ネアンデルタール人と現代アフリカ系集団には見られない)遺伝的類似性については、ネアンデルタール人と(出アフリカ後の)現生人類との交雑によるものではなく、両者の共通の祖先集団に由来するものだ、とも想定され得ます。

 この研究は、非組み換え配列の区画における変異に注目し、ゲノムを短い領域に分割して推定するという新たな手法を用いることにより、ネアンデルタール人と非アフリカ系現代人との間の(ネアンデルタール人と現代アフリカ系集団には見られない)遺伝的類似性は両者の共通祖先集団に由来する、との想定を決定的に退け、改めてネアンデルタール人と(出アフリカ後の)現生人類との交雑という見解を強く支持しています。またこの研究では、非アフリカ系現代人に占めるネアンデルタール人由来の遺伝子の割合は、じゅうらいの研究よりも高い3.4%~7.3%と推定されました。ただ、この論文の著者のコンラッド=ローゼ博士は、新たな推定値は複雑な計算によるもので変動もあり得るとして、過剰に注目しないよう、注意を喚起しています。

 この研究で用いられた新たな分析法は、ヨーロッパの昆虫集団と東南アジアの豚の遺伝的な進化史を研究していて開発され、そのさいに用いられた種の中には、希少なものも含まれていたそうです。そのため、この新たな分析法は、希少種や絶滅種の進化史を解明するさいに役立つだろう、と指摘されています。改めて、ネアンデルタール人と現生人類との交雑が確認されたことのみならず、さまざまな生物の進化史を解明するうえで役に立ちそうな分析法を提示したという意味で、ひじょうに意義のある研究だと言えそうです。


参考文献:
Lohse K, and Frantz LAF.(2014): Neandertal Admixture in Eurasia Confirmed by Maximum Likelihood Analysis of Three Genomes. Genetics, 196, 4, 1241-1251.
http://dx.doi.org/10.1534/genetics.114.162396

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