先コロンブス期の南アメリカ大陸にポリネシアから鶏がもたらされたのか?

 太平洋における鶏の拡散についての遺伝学的な研究(Thomson et al., 2014)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この報道にもあるように、ポリネシア人と先コロンブス期の南アメリカ人との交流は、サツマイモを根拠に以前から主張されています。両者の交流は鶏についての研究(Storey et al., 2007)からも主張されており、このブログでも以前取り上げたことがあります(関連記事)。

 ところが、上記報道によると、鶏を根拠にポリネシア人と先コロンブス期の南アメリカ人との交流を主張した研究は、現在では否定されているそうです。先コロンブス期とされた南アメリカ大陸の鶏の骨の年代は誤りで、ポリネシアの鶏に由来するとされた遺伝的変異も、ごく一般的な変異だと判明した、とのことです。この研究では、太平洋の島々の現代および過去の鶏のミトコンドリアDNAの調節領域の配列が決定され、比較されました。そのさい、試料汚染を除去する処置がとられた、とのことです。

 この結果、ミクロネシアとポリネシアには早期に鶏が持ち込まれ、その起源地としてフィリピンが推定される、との結果が得られました。一方、南アメリカ大陸の鶏の早期の標本に関しては、ポリネシアな特徴的なミトコンドリアDNAのハプロタイプが検出されなかった、とのことです。この研究では、先コロンブス期の南アメリカ大陸に、ポリネシアから鶏がもたらされた確実な証拠はない、と指摘しています。ただ、現時点では確実な証拠がなくとも、今後発見される可能性は低くはないように思います。


参考文献:
Storey AA. et al.(2007): Radiocarbon and DNA evidence for a pre-Columbian introduction of Polynesian chickens to Chile. PNAS, 104, 25, 10335-10339.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.0703993104

Thomson VA. et al.(2014): Using ancient DNA to study the origins and dispersal of ancestral Polynesian chickens across the Pacific. PNAS, 111, 13, 4826–4831.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1320412111

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