白亜紀末の大量絶滅の要因

 まだ日付は変わっていないのですが、3月11日分の記事として2本掲載しておきます(その一)。白亜紀末の大量絶滅の要因についての研究(Ohno et al., 2014)が報道されました。白亜紀末に恐竜など多くの生物が絶滅したことは以前からよく知られており、この20年ほどは、その要因として小惑星が衝突したという説が有力視されていることも、一般に知られるようになったと思います。この研究では、6500万年前頃に現在のユカタン半島あたりに小惑星が衝突した結果、硫酸エアロゾルがこれまでの推定よりもずっと早い2~3日中に表面に沈着し、海洋表層が強く酸化されたことが、海洋生命に有害な影響を及ぼしたのだろう、と推測されています。これにより、海洋表層の生物種が絶滅し、深海生物が選択的に生き延びたことを説明できそうだ、とのことです。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


チチュラブ衝突後の強い海洋酸性化
 メキシコ・ユカタン半島で6500万年前に起きたチチュラブ小惑星衝突により生じた硫黄に富んだ蒸気が海洋を急速に酸化させた可能性があるとの報告が掲載される。この発見は、その時に海洋表層の生物種が絶滅し、深海生物が選択的に生き延びたことを説明できる可能性がある。

 大野宗祐たちは、チチュラブ衝突の起きた場所で見つかった硫黄に富んだ岩石である硬石膏に対して衝突実験を行い、衝突で生じた蒸気の組成を分析した。大野たちは、小惑星が地球に衝突するときに予想される速度に近い衝突速度では、硬石膏中の硫黄は蒸発して三酸化硫黄となり、大気中の水蒸気とすぐに反応して硫酸エアロゾルを形成することを発見した。大野たちは、硫酸エアロゾル粒子は衝突した場所から放出されたより重い破片の粒子に付着することを示している。その結果、硫酸エアロゾルは、これまで考えられていたよりもずっと早く2~3日中に表面に沈着したと考えられる。このようにして、硫酸が急速に地球の表面にもたらされたので、海洋表層が強く酸化され、海洋生命に有害な影響を及ぼしたのだろう。



参考文献:
Ohno S. et al.(2014): Production of sulphate-rich vapour during the Chicxulub impact and implications for ocean acidification. Nature Geoscience, 7, 279–282.
http://dx.doi.org/10.1038/ngeo2095

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