人類最古の肉食

 まだ日付は変わっていないのですが、3月9日分の記事として掲載しておきます。取り上げるのが遅れましたが、人類最古の持続的な肉食についての研究(Ferraro et al., 2013)が公表されました。人類の石器の使用は260万年前頃までさかのぼります(オルドワン)。人類の石器の使用開始を肉食と関連づける見解は有力視されているものの、そうした証拠は180万年以上前となると乏しく、人類の最初期の肉食についてはよく分かっていません。180万年前以降となると、たとえばアルジェリア北東部で180万年前頃の肉食の考古学的証拠が発見されています(関連記事)。人類の肉食の証拠は340万年前頃までさかのぼり、しかも石器を用いていた可能性が指摘されていますが、石器の使用との解釈には批判が多いようです(関連記事)。また、340万年前頃の肉食とはいっても、持続的な肉食だったか否かは不明です。

 この研究では、ケニア西部のカンジェラサウス(Kanjera South)で発見された膨大な動物遺骸の分析から、人類の持続的な肉食が200万年前よりもさかのぼることを明らかにし、これは人類の持続的な肉食の考古学的証拠としては最古のものになる、と指摘しています。カンジェラサウスでは数百年から数千年程度の連続した人類による肉食の証拠が確認されています。当時のカンジェラサウスは、湖と丘・山の樹木の間に位置する草原だったようです。

 人類が消費の対象としたのはおもに小型の有蹄動物で、加工処理した痕跡が確認されました。また、小型有蹄動物よりも少ないものの、人類はヌー程度の大きさの動物もたまに入手していたようです。小型動物に関しては、人類が動物の死後比較的早く獲得したことが骨の分析から示唆されており、この研究では、人類の狩猟活動の最初の証拠になるかもしれない、との見解が提示されています。一方、中型動物に関しては、死肉漁りだった可能性が指摘されています。人類は持続的な肉食を始めた当初より、狩猟と死肉漁りの両方により動物を獲得していたのかもしれません。


参考文献:
Ferraro JV, Plummer TW, Pobiner BL, Oliver JS, Bishop LC, et al. (2013) Earliest Archaeological Evidence of Persistent Hominin Carnivory. PLoS ONE 8(4): e62174.
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0062174

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