西宮秀紀『日本古代の歴史3 奈良の都と天平文化』
『日本古代の歴史』全6巻の第3巻として2013年11月に吉川弘文館より刊行されました。本書が対象としている時代は、文武天皇の即位から長岡京への遷都までの90年弱です。奈良時代を語るにあたって大宝律令の制定は欠かせない、という意図もあるのかもしれません。また、『続日本紀』が文武天皇の元年から始まるので、区切りがよいということなのかもしれません。
本書の特徴は、中央と地方の律令制度・政治史・地方社会の実態・外交史・「辺境」史・文化史・宗教史と、じつに多岐に亘って言及していることです。文献だけではなく考古学の研究成果も取り入れられており、情報量の多さと密度の濃さが強く印象に残ります。本書は、奈良時代の一般向け通史として当分は基準になるのではないか、というくらい充実した一冊になっているように思います。正直なところ、情報量が多く一回読んだだけでは頭に入りきれないことも少なからずあるので、今後何回か読み直そうと考えています。
考古学的成果から、8世紀後半~9世紀にかけての関東地方の集落遺跡では、村落内の寺院とともに、五芒星などの道教的信仰も見られることが指摘されています。そうした道教的信仰を想起させるものは平城京跡からも発見されているそうで、古代日本では道教制度の公的流入は禁止されていただろうが、民間には広まっていたのだろう、と推測されています。また、墨書人面土器などから、奈良時代には神祇信仰や仏教だけではなく多様な信仰の世界が存在していたのだろう、とも指摘されています。
本書は奈良時代を規定した律令制について、「官制・民衆支配・収奪の三機構が根幹であり、その有機的な関係による国家システム」と説明されています。米については、前近代における食料としては低く評価する見解もあるものの、租として備蓄された量は膨大であり、食用としての米を再評価する必要もあろう、との見解を提示しています。奈良時代に唐から直輸入された舶来文化は、現在の日本文化と直結するものではなく、日本人の感性からじょじょに忘れ去られる運命にあったものの、現在からみると逆にモダンな感じもする、とも評価されています。
本書の特徴は、中央と地方の律令制度・政治史・地方社会の実態・外交史・「辺境」史・文化史・宗教史と、じつに多岐に亘って言及していることです。文献だけではなく考古学の研究成果も取り入れられており、情報量の多さと密度の濃さが強く印象に残ります。本書は、奈良時代の一般向け通史として当分は基準になるのではないか、というくらい充実した一冊になっているように思います。正直なところ、情報量が多く一回読んだだけでは頭に入りきれないことも少なからずあるので、今後何回か読み直そうと考えています。
考古学的成果から、8世紀後半~9世紀にかけての関東地方の集落遺跡では、村落内の寺院とともに、五芒星などの道教的信仰も見られることが指摘されています。そうした道教的信仰を想起させるものは平城京跡からも発見されているそうで、古代日本では道教制度の公的流入は禁止されていただろうが、民間には広まっていたのだろう、と推測されています。また、墨書人面土器などから、奈良時代には神祇信仰や仏教だけではなく多様な信仰の世界が存在していたのだろう、とも指摘されています。
本書は奈良時代を規定した律令制について、「官制・民衆支配・収奪の三機構が根幹であり、その有機的な関係による国家システム」と説明されています。米については、前近代における食料としては低く評価する見解もあるものの、租として備蓄された量は膨大であり、食用としての米を再評価する必要もあろう、との見解を提示しています。奈良時代に唐から直輸入された舶来文化は、現在の日本文化と直結するものではなく、日本人の感性からじょじょに忘れ去られる運命にあったものの、現在からみると逆にモダンな感じもする、とも評価されています。
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