東京都知事選結果
まだ日付は変わっていないのですが、2月11日分の記事として2本掲載しておきます(その一)。2月9日に投開票となった東京都知事選は、大手マスコミの情勢調査通り舛添要一元厚生労働相が圧勝しました。選挙期間中、マスメディアに有力候補として扱われることの多かった4人の得票数は、以下の通りとなります。()は得票率です。
舛添要一候補・・・2112979票(43.40%)
宇都宮健児氏候補・・・982594票(20.18%)
細川護煕候補・・・956063票(19.64%)
田母神俊雄候補・・・610865票(12.55%)
告示の時点ですでに、舛添氏の圧勝はほぼ確実という情勢でした。選挙結果について言えば、舛添氏の圧勝はほぼ確定していたので、投票率はどの程度になるのか、舛添氏と2位の候補とはどれだけの差がつくのか、細川氏と宇都宮氏の2位争いはどちらが制するのか、泡沫候補扱いされてもおかしくはなかった田母神氏がどれだけ票を獲得するのか、ということに注目していました。
投票率は46.14%で、衆院選と同日に行われた前回(62.60%)はもちろんのこと、過去の現職圧勝の都知事選のうち、1983年の47.96%をも下回る低投票率となりました。現職圧勝の都知事選のうち、1987年の43.19%および2003年の44.94%を何とか上回った程度です。どこまで一般化できるのか、自信はありませんが、一有権者の私が感じた限りでは、この3年弱で3回目の都知事選ということで、やや白けた雰囲気があったようにも思います。また、投票前日の大雪の影響も大きかったのかもしれません。
舛添氏の得票率は43.4%で、新人の当選者としては、猪瀬前都知事には遠く及ばないにしても、最近の都知事では、青島元都知事(1995年の36.60%)と石原元都知事(1995年の30.47%)を上回りました。対立候補の弱さ・失策・に助けられた感は大きいのですが、今回の都知事選の候補者のなかでは、相対的に有権者へ安心感を与えたのかもしれません。大手マスコミの情勢調査でもNHKの投票日出口調査でも、無党派層では舛添氏の支持が最も多かったそうで、組織票だけの勝利というわけではないでしょう。
2位争いは宇都宮氏が制し、3位の細川氏との得票差は26531票でした(得票率の差は0.54%)。宇都宮氏が細川氏との接戦を制したのは、投票率が下がって共産党の組織票の比重が高くなったからだ、というのが常識的な分析でしょうか。ただ、NHKの投票日出口調査でも、無党派層では宇都宮氏が細川氏を上回っていたので、投票率がもっと高かったとしても、宇都宮氏が細川氏を上回ったかもしれません。
今回、私は終盤まで誰に投票するのか迷いましたが(関連記事)、けっきょく前回と同じく宇都宮氏に投票しました。澤藤統一郎弁護士のブログを読むと、宇都宮氏が都知事に相応しい人物とはとても思えませんが、今回の主要候補のなかでは最もましかな、という判断です。また、長期だった石原都政およびそれを継承した猪瀬都政や中央の現安倍政権への批判票としては最も有効な投票先かな、とも考えました。
しかし、投票率が大きく低下したなか、宇都宮氏は得票数・得票率ともに前回(968960票、14.58%)を上回ったとはいえ、残念ながら、これでは安倍首相や自民党や舛添新都知事を牽制できるような結果とは言えないでしょう。ただ、自民党には安倍首相への不満が少なくないようですから、内閣支持率が下がれば、首相降ろしの気運も高まるでしょう。その意味で、都知事選の結果に絶望する必要はないと思います。
細川氏は勝利を確信して出馬表明したのかもしれませんが、2位とは接戦の3位で、当選した舛添氏に大差をつけられました。細川陣営の選挙戦略にも問題はあったかもしれませんが、実質的に小泉元首相頼みだけになったことが最大の敗因でしょうか。細川氏はもう政治的には完全に過去の人でしたが、小泉氏の「神通力」もマスコミや一部の政治家が予想し恐れたであろう水準には程遠いものでした。やはり、権力中枢にありマスメディアに大々的に取り上げられてこその「小泉劇場」ということでしょうか。
田母神氏は予想通りの4位でしたが、いかに石原元知事の支援があったとはいえ、知名度が低く大規模な組織支援もないのに、得票数610865(得票率12.55%)とは驚きました。参院選東京選挙区であれば、当選しても不思議ではない得票数です。田母神氏は泡沫候補扱いされても当然なのに、石原元都知事の支援があるとはいえ、大手メディアに主要候補として扱われているとは、ずいぶんと優遇されているなあ、と私は思っていたくらいでした。これは私の過小評価だったと言うべきでしょう。
田母神氏に投票した有権者全員が田母神氏の思想信条に近いわけではないでしょうが、それにしても、田母神氏の都知事選での得票率が12.55%にいたるとは、何とも嫌な世の中になったもので、さすがに私も、これまでの楽観的な見通しを大いに反省しなければなりません。こう言うと、石原元都知事の都知事選での得票数・率を忘れたのか、と嘲笑されそうですが、芥川賞作家・大臣および自民党総裁選出馬経験者にして、戦後の代表的スターの一人の兄たる石原元都知事と、ほぼ「愛国者」ということだけで知名度を得た田母神氏とでは、基盤がまったく異なると言うべきでしょう。その意味で、今回の田母神氏の得票数・率の持つ意味は重いと思います。
私は開票前には、舛添氏が圧勝するとしても、それは安倍政権の全面的な信認ではない、とやや楽観していました。候補者のなかで安倍首相と最も思想信条が近いのは、明らかに田母神氏です。その田母神氏は10万票に届かず泡沫候補として落選し、安倍首相の思想信条を積極的に支持しているのは都民のごく一部であり、都民の多数は、自民党以外の政党に問題が多すぎるので、経済成長を期待して安倍政権を消極的に支持しているだけだと明らかになるだろう、とやや軽く考えていたくらいでした。
しかし、田母神氏が610865票獲得し、得票率が12.55%となると、その認識を大きく改めなければなりません。どうも、日本の世情についての私の見通しはあまりにも甘すぎたようです。とくに恐ろしいのは出口調査の結果で、全面的に信用できないとはいえ、20代での田母神氏の支持はかなり高かったようです。若い世代の投票率は低いのでしょうが、若い世代は、田母神氏を積極的に支持するような「政治意識の高い人」でないと、あまり積極的には投票に行かない、ということにもなります。これは深刻な問題だと思います。また、30代・40代でも田母神氏の支持率がそれなりに高いことも不安です。20代ならば、特定の思想に「かぶれて」投票する人が多い傾向にあっても仕方のないところもあるかな、とは思いますが、30代・40代でもこの支持率とは、やはり深刻な問題だと思います。
正直なところ、田母神氏は演説や討論に長けているわけではなく、容貌も地味です。若いというわけでもありません。少なくともこの都知事選の前までは、知名度も舛添氏・細川氏よりはずっと低かったでしょう(宇都宮氏にも劣っていた可能性が高いと思います)。そのような人がこれだけの票を獲得したのですから、若く演説や討論に長けて、容貌に優れた田母神氏的な思想信条の人(性別は問いません)が本格的に政治活動を始めたら、そうした政治勢力が国会で一定数以上議席を獲得し、いくつかの首長選で勝利しても不思議ではありません。
まあそもそも、現職の総理大臣自身が、田母神氏的な思想信条の人ではあります。今はまだ、安倍首相も立場上そうした思想信条を全開にしているわけではありませんが、それでもかなり表に出すようになっており、世界では警戒している人も増えてきているように思います(もちろん、以前から警戒されてはいましたが)。「若く演説や討論に長けて容貌に優れた」田母神氏的な思想信条の政治家が登場して勢力を拡大し、自民党の安倍首相的な政治勢力と連携した時、そうした政治勢力の歴史認識が日本でさらに強く主張されるようになり、それが日本政府の外交を制約するのではないか、と不安になります。舛添氏の圧勝は予想通りでしたが、私にとっては、楽観視していた現状認識を大きく改めさせられることになった、衝撃的な都知事選でした。
舛添要一候補・・・2112979票(43.40%)
宇都宮健児氏候補・・・982594票(20.18%)
細川護煕候補・・・956063票(19.64%)
田母神俊雄候補・・・610865票(12.55%)
告示の時点ですでに、舛添氏の圧勝はほぼ確実という情勢でした。選挙結果について言えば、舛添氏の圧勝はほぼ確定していたので、投票率はどの程度になるのか、舛添氏と2位の候補とはどれだけの差がつくのか、細川氏と宇都宮氏の2位争いはどちらが制するのか、泡沫候補扱いされてもおかしくはなかった田母神氏がどれだけ票を獲得するのか、ということに注目していました。
投票率は46.14%で、衆院選と同日に行われた前回(62.60%)はもちろんのこと、過去の現職圧勝の都知事選のうち、1983年の47.96%をも下回る低投票率となりました。現職圧勝の都知事選のうち、1987年の43.19%および2003年の44.94%を何とか上回った程度です。どこまで一般化できるのか、自信はありませんが、一有権者の私が感じた限りでは、この3年弱で3回目の都知事選ということで、やや白けた雰囲気があったようにも思います。また、投票前日の大雪の影響も大きかったのかもしれません。
舛添氏の得票率は43.4%で、新人の当選者としては、猪瀬前都知事には遠く及ばないにしても、最近の都知事では、青島元都知事(1995年の36.60%)と石原元都知事(1995年の30.47%)を上回りました。対立候補の弱さ・失策・に助けられた感は大きいのですが、今回の都知事選の候補者のなかでは、相対的に有権者へ安心感を与えたのかもしれません。大手マスコミの情勢調査でもNHKの投票日出口調査でも、無党派層では舛添氏の支持が最も多かったそうで、組織票だけの勝利というわけではないでしょう。
2位争いは宇都宮氏が制し、3位の細川氏との得票差は26531票でした(得票率の差は0.54%)。宇都宮氏が細川氏との接戦を制したのは、投票率が下がって共産党の組織票の比重が高くなったからだ、というのが常識的な分析でしょうか。ただ、NHKの投票日出口調査でも、無党派層では宇都宮氏が細川氏を上回っていたので、投票率がもっと高かったとしても、宇都宮氏が細川氏を上回ったかもしれません。
今回、私は終盤まで誰に投票するのか迷いましたが(関連記事)、けっきょく前回と同じく宇都宮氏に投票しました。澤藤統一郎弁護士のブログを読むと、宇都宮氏が都知事に相応しい人物とはとても思えませんが、今回の主要候補のなかでは最もましかな、という判断です。また、長期だった石原都政およびそれを継承した猪瀬都政や中央の現安倍政権への批判票としては最も有効な投票先かな、とも考えました。
しかし、投票率が大きく低下したなか、宇都宮氏は得票数・得票率ともに前回(968960票、14.58%)を上回ったとはいえ、残念ながら、これでは安倍首相や自民党や舛添新都知事を牽制できるような結果とは言えないでしょう。ただ、自民党には安倍首相への不満が少なくないようですから、内閣支持率が下がれば、首相降ろしの気運も高まるでしょう。その意味で、都知事選の結果に絶望する必要はないと思います。
細川氏は勝利を確信して出馬表明したのかもしれませんが、2位とは接戦の3位で、当選した舛添氏に大差をつけられました。細川陣営の選挙戦略にも問題はあったかもしれませんが、実質的に小泉元首相頼みだけになったことが最大の敗因でしょうか。細川氏はもう政治的には完全に過去の人でしたが、小泉氏の「神通力」もマスコミや一部の政治家が予想し恐れたであろう水準には程遠いものでした。やはり、権力中枢にありマスメディアに大々的に取り上げられてこその「小泉劇場」ということでしょうか。
田母神氏は予想通りの4位でしたが、いかに石原元知事の支援があったとはいえ、知名度が低く大規模な組織支援もないのに、得票数610865(得票率12.55%)とは驚きました。参院選東京選挙区であれば、当選しても不思議ではない得票数です。田母神氏は泡沫候補扱いされても当然なのに、石原元都知事の支援があるとはいえ、大手メディアに主要候補として扱われているとは、ずいぶんと優遇されているなあ、と私は思っていたくらいでした。これは私の過小評価だったと言うべきでしょう。
田母神氏に投票した有権者全員が田母神氏の思想信条に近いわけではないでしょうが、それにしても、田母神氏の都知事選での得票率が12.55%にいたるとは、何とも嫌な世の中になったもので、さすがに私も、これまでの楽観的な見通しを大いに反省しなければなりません。こう言うと、石原元都知事の都知事選での得票数・率を忘れたのか、と嘲笑されそうですが、芥川賞作家・大臣および自民党総裁選出馬経験者にして、戦後の代表的スターの一人の兄たる石原元都知事と、ほぼ「愛国者」ということだけで知名度を得た田母神氏とでは、基盤がまったく異なると言うべきでしょう。その意味で、今回の田母神氏の得票数・率の持つ意味は重いと思います。
私は開票前には、舛添氏が圧勝するとしても、それは安倍政権の全面的な信認ではない、とやや楽観していました。候補者のなかで安倍首相と最も思想信条が近いのは、明らかに田母神氏です。その田母神氏は10万票に届かず泡沫候補として落選し、安倍首相の思想信条を積極的に支持しているのは都民のごく一部であり、都民の多数は、自民党以外の政党に問題が多すぎるので、経済成長を期待して安倍政権を消極的に支持しているだけだと明らかになるだろう、とやや軽く考えていたくらいでした。
しかし、田母神氏が610865票獲得し、得票率が12.55%となると、その認識を大きく改めなければなりません。どうも、日本の世情についての私の見通しはあまりにも甘すぎたようです。とくに恐ろしいのは出口調査の結果で、全面的に信用できないとはいえ、20代での田母神氏の支持はかなり高かったようです。若い世代の投票率は低いのでしょうが、若い世代は、田母神氏を積極的に支持するような「政治意識の高い人」でないと、あまり積極的には投票に行かない、ということにもなります。これは深刻な問題だと思います。また、30代・40代でも田母神氏の支持率がそれなりに高いことも不安です。20代ならば、特定の思想に「かぶれて」投票する人が多い傾向にあっても仕方のないところもあるかな、とは思いますが、30代・40代でもこの支持率とは、やはり深刻な問題だと思います。
正直なところ、田母神氏は演説や討論に長けているわけではなく、容貌も地味です。若いというわけでもありません。少なくともこの都知事選の前までは、知名度も舛添氏・細川氏よりはずっと低かったでしょう(宇都宮氏にも劣っていた可能性が高いと思います)。そのような人がこれだけの票を獲得したのですから、若く演説や討論に長けて、容貌に優れた田母神氏的な思想信条の人(性別は問いません)が本格的に政治活動を始めたら、そうした政治勢力が国会で一定数以上議席を獲得し、いくつかの首長選で勝利しても不思議ではありません。
まあそもそも、現職の総理大臣自身が、田母神氏的な思想信条の人ではあります。今はまだ、安倍首相も立場上そうした思想信条を全開にしているわけではありませんが、それでもかなり表に出すようになっており、世界では警戒している人も増えてきているように思います(もちろん、以前から警戒されてはいましたが)。「若く演説や討論に長けて容貌に優れた」田母神氏的な思想信条の政治家が登場して勢力を拡大し、自民党の安倍首相的な政治勢力と連携した時、そうした政治勢力の歴史認識が日本でさらに強く主張されるようになり、それが日本政府の外交を制約するのではないか、と不安になります。舛添氏の圧勝は予想通りでしたが、私にとっては、楽観視していた現状認識を大きく改めさせられることになった、衝撃的な都知事選でした。
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