『ヒトはどのように進化してきたか』第5版

 ロバート=ボイド、ジョーン=B=シルク著、松本晶子、小田亮監訳で、ミネルヴァ書房より2011年7月に刊行されました。原書の刊行は2009年です。本書は、カリフォルニア大学人類学部のボイド教授(進化学)とシルク教授(霊長類学)の執筆による人類進化についての教科書です。1997年の初刊行以降、この教科書は版を重ね、本書はその第5版の日本語訳となります。

 本書は人類進化についての教科書とはいっても、最古の人類候補の化石以降の年代のみを扱っているのではありません。4部構成の本書は、学説史にも言及した進化学の基礎と、現生霊長類についての広範な研究成果についても、それぞれ1部を割いています。本書は教科書として執筆されていますから、基礎的な解説から始めて進化を深く理解させよう、という構成になっており、進化学の基礎や現生霊長類について、教えられるところが多々ありました。

 と言いますか、一度読んだだけではじゅうぶんには咀嚼できていないでしょうから、今後何度か再読しよう、と考えています。また、このブログで参考文献として引用することもたびたびありそうです。本書を購入したのは確か2年以上前なのですが、大部の書なので、読み始めたらしばらくは他の本に取りかかれそうにないな、と思い、新たに購入した本書ほどには厚くない本を読んでいたら、未読のまま2年以上経過していました。年末年始を迎えて、ちょうど今年秋以降に購入した複数の本をほぼ読み終わったところだったので、気合を入れて読んでみよう、と思い立った次第です。

 原書の刊行は2009年なので、2010年以降に明らかになった、デニソワ人や人類の各系統間の複雑な交雑などは取り上げられていませんが、それでもわりと近年までの研究成果が整理されているので、新たな知識も多く得ましたし、自分の知識・見解を見直して整理するうえで大いに有益でした。本書は索引や用語解説も充実しており、人類進化の教科書に相応しい一冊になっていると思います。価格は税抜9000円とかなり高めですが、それだけの価値はじゅうぶんにあると思います。

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