南アメリカ大陸への人類の3万年前頃の移住?

 まだ日付は変わっていないのですが、12月4日分の記事として3本掲載しておきます(その二)。南アメリカ大陸における人類の痕跡についての研究(Fariña et al., 2014)が報道されました。この研究では、ウルグアイ南部のアロヨデルビスカイーノ遺跡で発見された巨大動物の骨と石器(と思われるもの)の分析が報告されています。アロヨデルビスカイーノ遺跡では、少なくとも27個体に属する1000個以上の骨が発見されており、その多くがナマケモノです。そのナマケモノの中でも大半を占めていたのは、レストドン=アルマータス(Lestodon Armatus)という種とのことです。

 注目されるのは、これらの巨大動物の骨の一部に、人間が石器で動物の骨につけた傷と似たものが認められる、ということです。さらに、スクレーパー(掻器)らしき「石器」も発見されていますが、これが石器なのか、報告者たちは絶対の自信を持っているわけではないようです。この研究は、アロヨデルビスカイーノ遺跡で発見された大型動物の骨が、アメリカ大陸における大型動物の絶滅という、科学的のみならず倫理的関心の高い問題とつながることを指摘しています。

 この研究でもっとも驚くべき点は、報告者たちも認めるように、アロヨデルビスカイーノ遺跡で発見された巨大動物の骨の年代です。放射性炭素年代によると、30000~27000年前となります。アメリカ大陸への人類最初の移住時期については、長年激論が続いてきました。近年では、長年通説だったクローヴィス最古説はほぼ否定されたと言ってもよく、クローヴィス文化よりも古い15000年前くらいまでは少なくともさかのぼるのではないか、との見解が主流になりつつあるように思います。

 しかし、この研究が妥当だとすると、アメリカ大陸への人類の移住年代は3万年前頃までさかのぼることになるわけで、まさに驚異の発見と言えるでしょう。もっとも、アメリカ大陸への人類の移住は5万年前頃までさかのぼる、といった見解もこれまで提示されてはいましたが、確実な証拠とは認められていませんでした。この研究は、確実な証拠になる可能性が低くはなさそうなので、大いに注目されます。もしこの研究が妥当だとすると、「最初のアメリカ人」がどこから移住してきたのか、という問題もさらに活発に議論されることになりそうです。


参考文献:
Fariña RA. et al.(2014): Arroyo del Vizcaíno, Uruguay: a fossil-rich 30-ka-old megafaunal locality with cut-marked bones. Proceedings of the Royal Society B, 281, 1774, 20132211.
http://dx.doi.org/10.1098/rspb.2013.2211

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