改めて確認されたネアンデルタール人の埋葬

 まだ日付は変わっていないのですが、12月18日分の記事として2本掲載しておきます(その二)。ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)の埋葬についての研究(Rendu et al., 2014)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究は、最初にネアンデルタール人が埋葬された例として取り上げられたフランスのラシャペローサン遺跡を再検証しています。ラシャペローサン遺跡が発掘されたのは1908年なので、どこまで科学的な発掘がなされたのか、疑問視する研究者もおり、ネアンデルタール人の埋葬という見解にも疑問が呈されていました。

 この研究は、ラシャペローサン遺跡の再検証の結果、ネアンデルタール人が意図的に埋葬されたことが改めて確認された、と結論づけています。人骨の化石成因論的分析から、ネアンデルタール人の遺体は死後すぐに発見された窪地に置かれ、土などで覆われた、と指摘されています。ネアンデルタール人の骨が発見された窪地は、少なくとも部分的には墓にするために手が加えられていたことがはっきりし、同じ洞窟で見つかったトナカイやバイソンの骨と違い、ネアンデルタール人の骨には傷がほとんどなく、風化で摩耗した徴候や、動物に荒らされた様子も見られなかった、とのことです。

 こうしたことから、人類の埋葬習慣は墓として利用できる自然の窪地を簡単に加工することから発展したのではないか、と示唆する研究者もいます。上記報道では、埋葬していたことは、ネアンデルタール人に象徴的思考能力があったとする近年の知見と符合する、と指摘されています。今後問題となるのは、ネアンデルタール人と現生人類(ホモ=サピエンス)の象徴的思考能力にはどの程度の共通性・相違があったのか、ということでしょう。また、ラシャペローサン遺跡で1908年に発見されたネアンデルタール人は、歯をほとんど失い、腰と背中も痛めていたので、周囲の人に介護されていたのだろう、と推測されています。


参考文献:
Rendu W. et al.(2014): Evidence supporting an intentional Neandertal burial at La Chapelle-aux-Saints. PNAS, 111, 1, 81–86.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1316780110

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