デニソワ人と未知の人類の交雑?
まだ日付は変わっていないのですが、11月28日分の記事として2本掲載しておきます(その二)。気づくのが遅れたのですが、現生人類(ホモ=サピエンス)と未知の人類との交雑の可能性を指摘した報告が報道されました。今月18日にロンドンの王立協会の会議にて、ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)とデニソワ人(種もしくは亜種区分未定)のゲノム配列が報告されたそうです。この報告は、ハーバード大学医学大学院(アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストン市)とマックスプランク進化人類学研究所(ドイツ連邦共和国ライプツィヒ市)の共同研究に基づいているようです。
ネアンデルタール人が非アフリカ系現代人の祖先集団と、デニソワ人がオセアニアの現代人の祖先集団と交雑したことは、今では一般にもよく知られているように思います。しかし、この会議での報告によると、これまでの研究で使われたネアンデルタール人やデニソワ人のゲノム配列の精度は低かったので、現代人のゲノム配列に匹敵するような高精度のネアンデルタール人とデニソワ人のゲノム配列のバージョンを改めて作ったとのことです。
その結果、デニソワ人はオセアニアの現代人の祖先集団だけではなく、ネアンデルタール人および中国や東アジアの他地域の祖先集団と交雑していたことが明らかになった、とのことです。以前、現代東アジア人にデニソワ人の遺伝的痕跡が認められる、とする研究結果が発表された時には、否定的な見解も提示されていました(関連記事)。もっと高精度なゲノム配列で、現代東アジア人におけるデニソワ人の遺伝的痕跡が改めて確認された、ということでしょうか。この報道では詳しく伝えられていませんが、現代日本人もデニソワ人の遺伝子を一部継承していることになりそうです。
ここまででもたいへん興味深い研究結果なのですが、この報告は会議の場を騒然とさせる研究結果を提示しました。それは、デニソワ人がネアンデルタール人でも現生人類(ホモ=サピエンス)でもない、3万年以上前にアジアにいたであろう別の絶滅人類集団と交雑した、という研究結果です。その人類集団がどの人類種なのかという推測をめぐって(もちろん、未知の人類種という可能性もあります)、会議は騒然としたそうです。
クリス=ストリンガー博士は、デニソワ人と交雑したネアンデルタール人でも現生人類でもない人類集団は、ホモ=ハイデルベルゲンシスではないだろうか、と推測しています。ハイデルベルゲンシスという種の区分問題はさておくとして、この遺伝的には未知の人類集団が、既知の化石人骨のどれかと同系統の可能性はあるでしょう。その人類集団が、あるいは3万年前頃までアジアで生きていたかもしれないわけで、ひじょうに興味深い研究結果だと思います。ネアンデルタール人やデニソワ人や更新世フローレス人(ホモ=フロレシエンシス)だけではなく、更新世のかなり後期まで、地球上には現生人類とは異なる系統の人類集団が複数生存しており、時として交雑もあったのでしょう。この分野における今後の研究の進展が大いに楽しみです。
ネアンデルタール人が非アフリカ系現代人の祖先集団と、デニソワ人がオセアニアの現代人の祖先集団と交雑したことは、今では一般にもよく知られているように思います。しかし、この会議での報告によると、これまでの研究で使われたネアンデルタール人やデニソワ人のゲノム配列の精度は低かったので、現代人のゲノム配列に匹敵するような高精度のネアンデルタール人とデニソワ人のゲノム配列のバージョンを改めて作ったとのことです。
その結果、デニソワ人はオセアニアの現代人の祖先集団だけではなく、ネアンデルタール人および中国や東アジアの他地域の祖先集団と交雑していたことが明らかになった、とのことです。以前、現代東アジア人にデニソワ人の遺伝的痕跡が認められる、とする研究結果が発表された時には、否定的な見解も提示されていました(関連記事)。もっと高精度なゲノム配列で、現代東アジア人におけるデニソワ人の遺伝的痕跡が改めて確認された、ということでしょうか。この報道では詳しく伝えられていませんが、現代日本人もデニソワ人の遺伝子を一部継承していることになりそうです。
ここまででもたいへん興味深い研究結果なのですが、この報告は会議の場を騒然とさせる研究結果を提示しました。それは、デニソワ人がネアンデルタール人でも現生人類(ホモ=サピエンス)でもない、3万年以上前にアジアにいたであろう別の絶滅人類集団と交雑した、という研究結果です。その人類集団がどの人類種なのかという推測をめぐって(もちろん、未知の人類種という可能性もあります)、会議は騒然としたそうです。
クリス=ストリンガー博士は、デニソワ人と交雑したネアンデルタール人でも現生人類でもない人類集団は、ホモ=ハイデルベルゲンシスではないだろうか、と推測しています。ハイデルベルゲンシスという種の区分問題はさておくとして、この遺伝的には未知の人類集団が、既知の化石人骨のどれかと同系統の可能性はあるでしょう。その人類集団が、あるいは3万年前頃までアジアで生きていたかもしれないわけで、ひじょうに興味深い研究結果だと思います。ネアンデルタール人やデニソワ人や更新世フローレス人(ホモ=フロレシエンシス)だけではなく、更新世のかなり後期まで、地球上には現生人類とは異なる系統の人類集団が複数生存しており、時として交雑もあったのでしょう。この分野における今後の研究の進展が大いに楽しみです。
この記事へのコメント
つまり、北京原人と未知の人類集団との交雑 ― その集団とデニソワ人との交雑 ― デニソワ人と現生人類との交雑 というように。
10年くらい前までの一般的な想定とは異なり、更新世末期まで少なからぬ系統の人類が存在していた可能性が高くなってきましたから、東アジアでも複数の系統の人類集団間で複雑な交雑関係が生じた可能性はあるでしょう。
モンゴロイドの寒冷適応とされている特徴は一般には最終氷期に出現したとされていますが、それが実は現生人類以外の系統の人類集団に由来するのではないかという可能性の検証は、今後の形質人類学・遺伝学の研究の進展を待つしかないだろう、と思います。
さて今回もまた、まことに興味深い人類学上の問題が取り上げられていますね。
現生人類でも、ネアンデルタール人でもデニソワ人でもない未知の人類種・・・・。
私としては、未だ帰属の定かでないダーリー人やマパ人の存在や、近年中国南部で発見された新種人類、
さらにはアジアのエレクトス種と現在のアジア・新大陸住民祖先との、何らかの交流を示唆しているともされるアタマジラミの研究などが次々と連想されて、正直興奮を禁じ得ない所であります・・・・。
※マパ人に関しては、かのストリンガー氏がネアンデルタール人との関係を示唆したこともあります。
中国で発見されている更新世の人骨は解釈が分かれていることが多いようですが、やはり大いに注目されます。