R.ランガム「調理で人類は進化した」
ブログ用に書き溜めておいた記事がそれなりの量になったので、今日は記事を3本掲載します(その二)。
『日経サイエンス』2013年12月号の記事です。調理により人類は効率的に栄養を摂取できるようになります。そのことが人類史において重要な役割を果たしただろう、と考えている人は多いでしょう。ランガム氏が共著者の一人である以前の論文では、加熱処理も含めて食品加工による食事時間と臼歯のサイズの減少はホモ属の進化の後に始まり、190万年前頃と推定されるエレクトスの出現の前かほぼ同時期に起きたのではないか、と主張されています(関連記事)。
この記事でも、大きな脳・小さな歯・短い腸という人間の特徴は加熱調理によって生まれた、とランガム氏は主張しています。ただ、この記事でも取材者が指摘しているように、人類による火の確実な使用の起源は、現時点では100万年前頃までにしかさかのぼりません(関連記事)。ランガム氏はミツオシエという鳥の例を反証に出していますが、正直なところ、傍証としてもやや弱いように思います。とはいえ、火の使用の起源は今後さらにさかのぼる可能性が高いでしょうから、ランガム氏の見解が今後有力説とみなされることもあるかもしれません。
この記事は特集「食欲」のうちの一記事で、この特集には教えられるところが多々あったというか、自分の食に関する常識が崩壊しそうなほどの衝撃を受けました。私は最近まで、食品添加物は多少気にしても、カロリーにはほとんど関心を払っていませんでした。しかし、この1年間でやや太ってしまったので、食生活を見直そうと思って最近になって少し調べ始めたところ、自分がいかに毎日高カロリーを摂取していたのか分かり、愕然としてしまいました。私はカロリーについてあまりにも無知でした。
もっとも驚いたのは菓子パンで、まさかメロンパンやデニッシュパンが1個で400~600kalも珍しくないとはまったく予想もしていませんでした。菓子パンをおやつとして食べていたら太るはずだなあ、と思ったものです(年をとって基礎的な代謝能力が衰えているというのもあるのでしょうが)。もちろん、これまで購入していたほとんどの菓子パンの袋にはカロリーが表示されていたはずなのですが、まったくと言ってよいほど目に入っていませんでした。
しかし、甘いものは好きなので、果物以外にも甘いものを少しは食べたいと思って探していたところ(カロリーが極端に低い菓子・飲料は、健康に悪そうな合成甘味料を多く使用していると考えたので、最初から選択肢にはありませんでした)、プリンとアイスクリームのなかには意外とカロリーがさほど高くないものもあることを知りました。最近では、原田乳業(株)の「なめらか練乳プリン」と(株)明治の「明治ファミリア バニラ&チョコ」を食べています。
ところが、特集「食欲」を読むと、肥満にならないためにはカロリーを抑えるだけではなく、どの栄養素からカロリーを摂取するのかも重要かもしれない、との見解を読み、お菓子だけではなく主食を見直すことも考えています。現代では、肥満は摂取カロリーが消費カロリーを上回るために起きる、という見解がほぼ常識になっているでしょうし、私もそう思っていました。ところが、特集「食欲」によると、同じカロリーを摂取しても、炭水化物の割合が多いと太りやすい可能性がある、とのことです。
炭水化物(に含まれるブドウ糖などの糖類)の摂取により血糖値が上昇してインスリンが放出されると、各細胞はエネルギーとしてブドウ糖を優先的に使い、脂肪細胞は蓄えている脂肪を保持するようになる、とのことです。この肥満炭水化物説(ホルモン説)はまだ少数派に留まっているようですが、現在では主流の肥満カロリー説とどちらが正しいのか、検証する予備実験が近いうちに始まるそうです。もし肥満炭水化物説が妥当だとなると、肥満を解消するには糖分を多く含む食事を控えるべきということでしょうから、甘いものを控えればよいということだけではなく、米やパンを主食とする食習慣の見直しも必要になってきそうです。
また、糖分を控えて合成甘味料を摂取することも肥満につながるかもしれません。味覚受容体は舌だけではなく体に広く存在し、小腸にも存在します。小腸の味覚受容体は合成甘味料に反応して大量のインスリンを放出するそうです。合成甘味料を使ったきょくたんに低カロリーの菓子・飲料(0kcalのものも珍しくありません)を食べても太るという研究結果が公表されたことを、近年になってネットか新聞で読んだ記憶があります。それは、合成甘味料を用いた0kcalの炭酸飲料を飲むような人は、ピザやハンバーガーのような高カロリー食品を食べることが多いからだろう、と私は軽く考えていたのですが、合成甘味料そのものが肥満の原因になる可能性も想定しないといけないのかもしれません。
この肥満の原因をめぐる議論とも関連しているのが、現在の食品カロリー表示です。この特集では、現在の食品カロリー表示には問題が多く、とても妥当とは言えない、とされています。現在の食品カロリー表示は、加工処理による違い・各食材の消化のされやすさの違い・消化に要するエネルギー量の違いなどがあまり考慮されていない、というわけです。たとえば、アーモンド1食のカロリーは170kcalとされていますが、じっさいに吸収できるカロリーは129kcalだと指摘されています。さらに、腸内細菌叢によっても消化効率が違ってくるそうですから、同じ食事でも個人により摂取カロリーが異なってくるわけです。その意味で、現在のカロリー表示に改善の余地が大きいのは間違いないにしても、厳密なカロリー計算は将来も無理ということになりそうです。
肥満について、薬物依存とも通ずるのではないか、との見解も興味深いものでした。脂肪分や糖分の豊富な食品は脳の報酬系に働きかけ、食欲抑制ホルモンを圧倒するようになる、とのことです。食べるほどさらに食べたくなる、というわけです。ただ、こうした仕組みを依存症と定義すべきか否か、見解が分かれているようです。『日経サイエンス』2013年12月号の表紙を見て、面白そうだな、と思って軽い気持ちで購入して読み始めたところ、私にとっては衝撃的な内容でした。取り上げられた見解はまだ議論が続いているものも多そうなので、今後の研究動向にも注目しています。
『日経サイエンス』2013年12月号の記事です。調理により人類は効率的に栄養を摂取できるようになります。そのことが人類史において重要な役割を果たしただろう、と考えている人は多いでしょう。ランガム氏が共著者の一人である以前の論文では、加熱処理も含めて食品加工による食事時間と臼歯のサイズの減少はホモ属の進化の後に始まり、190万年前頃と推定されるエレクトスの出現の前かほぼ同時期に起きたのではないか、と主張されています(関連記事)。
この記事でも、大きな脳・小さな歯・短い腸という人間の特徴は加熱調理によって生まれた、とランガム氏は主張しています。ただ、この記事でも取材者が指摘しているように、人類による火の確実な使用の起源は、現時点では100万年前頃までにしかさかのぼりません(関連記事)。ランガム氏はミツオシエという鳥の例を反証に出していますが、正直なところ、傍証としてもやや弱いように思います。とはいえ、火の使用の起源は今後さらにさかのぼる可能性が高いでしょうから、ランガム氏の見解が今後有力説とみなされることもあるかもしれません。
この記事は特集「食欲」のうちの一記事で、この特集には教えられるところが多々あったというか、自分の食に関する常識が崩壊しそうなほどの衝撃を受けました。私は最近まで、食品添加物は多少気にしても、カロリーにはほとんど関心を払っていませんでした。しかし、この1年間でやや太ってしまったので、食生活を見直そうと思って最近になって少し調べ始めたところ、自分がいかに毎日高カロリーを摂取していたのか分かり、愕然としてしまいました。私はカロリーについてあまりにも無知でした。
もっとも驚いたのは菓子パンで、まさかメロンパンやデニッシュパンが1個で400~600kalも珍しくないとはまったく予想もしていませんでした。菓子パンをおやつとして食べていたら太るはずだなあ、と思ったものです(年をとって基礎的な代謝能力が衰えているというのもあるのでしょうが)。もちろん、これまで購入していたほとんどの菓子パンの袋にはカロリーが表示されていたはずなのですが、まったくと言ってよいほど目に入っていませんでした。
しかし、甘いものは好きなので、果物以外にも甘いものを少しは食べたいと思って探していたところ(カロリーが極端に低い菓子・飲料は、健康に悪そうな合成甘味料を多く使用していると考えたので、最初から選択肢にはありませんでした)、プリンとアイスクリームのなかには意外とカロリーがさほど高くないものもあることを知りました。最近では、原田乳業(株)の「なめらか練乳プリン」と(株)明治の「明治ファミリア バニラ&チョコ」を食べています。
ところが、特集「食欲」を読むと、肥満にならないためにはカロリーを抑えるだけではなく、どの栄養素からカロリーを摂取するのかも重要かもしれない、との見解を読み、お菓子だけではなく主食を見直すことも考えています。現代では、肥満は摂取カロリーが消費カロリーを上回るために起きる、という見解がほぼ常識になっているでしょうし、私もそう思っていました。ところが、特集「食欲」によると、同じカロリーを摂取しても、炭水化物の割合が多いと太りやすい可能性がある、とのことです。
炭水化物(に含まれるブドウ糖などの糖類)の摂取により血糖値が上昇してインスリンが放出されると、各細胞はエネルギーとしてブドウ糖を優先的に使い、脂肪細胞は蓄えている脂肪を保持するようになる、とのことです。この肥満炭水化物説(ホルモン説)はまだ少数派に留まっているようですが、現在では主流の肥満カロリー説とどちらが正しいのか、検証する予備実験が近いうちに始まるそうです。もし肥満炭水化物説が妥当だとなると、肥満を解消するには糖分を多く含む食事を控えるべきということでしょうから、甘いものを控えればよいということだけではなく、米やパンを主食とする食習慣の見直しも必要になってきそうです。
また、糖分を控えて合成甘味料を摂取することも肥満につながるかもしれません。味覚受容体は舌だけではなく体に広く存在し、小腸にも存在します。小腸の味覚受容体は合成甘味料に反応して大量のインスリンを放出するそうです。合成甘味料を使ったきょくたんに低カロリーの菓子・飲料(0kcalのものも珍しくありません)を食べても太るという研究結果が公表されたことを、近年になってネットか新聞で読んだ記憶があります。それは、合成甘味料を用いた0kcalの炭酸飲料を飲むような人は、ピザやハンバーガーのような高カロリー食品を食べることが多いからだろう、と私は軽く考えていたのですが、合成甘味料そのものが肥満の原因になる可能性も想定しないといけないのかもしれません。
この肥満の原因をめぐる議論とも関連しているのが、現在の食品カロリー表示です。この特集では、現在の食品カロリー表示には問題が多く、とても妥当とは言えない、とされています。現在の食品カロリー表示は、加工処理による違い・各食材の消化のされやすさの違い・消化に要するエネルギー量の違いなどがあまり考慮されていない、というわけです。たとえば、アーモンド1食のカロリーは170kcalとされていますが、じっさいに吸収できるカロリーは129kcalだと指摘されています。さらに、腸内細菌叢によっても消化効率が違ってくるそうですから、同じ食事でも個人により摂取カロリーが異なってくるわけです。その意味で、現在のカロリー表示に改善の余地が大きいのは間違いないにしても、厳密なカロリー計算は将来も無理ということになりそうです。
肥満について、薬物依存とも通ずるのではないか、との見解も興味深いものでした。脂肪分や糖分の豊富な食品は脳の報酬系に働きかけ、食欲抑制ホルモンを圧倒するようになる、とのことです。食べるほどさらに食べたくなる、というわけです。ただ、こうした仕組みを依存症と定義すべきか否か、見解が分かれているようです。『日経サイエンス』2013年12月号の表紙を見て、面白そうだな、と思って軽い気持ちで購入して読み始めたところ、私にとっては衝撃的な内容でした。取り上げられた見解はまだ議論が続いているものも多そうなので、今後の研究動向にも注目しています。
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