NHKスペシャル『病の起源』第4集「心臓病~高性能ポンプの落とし穴~」

 まだ日付は変わっていないのですが、10月28日分の記事として掲載しておきます。今年5月に放送されたNHKスペシャル『病の起源』の続きです。これまでに放送された
プロローグ「人類進化700万年の宿命」
https://sicambre.seesaa.net/article/201305article_20.html
第1集「がん~人類進化が生んだ病~」
https://sicambre.seesaa.net/article/201305article_21.html
第2集「脳卒中~早すぎた進化の代償~」
https://sicambre.seesaa.net/article/201305article_28.html
第3集「うつ病~防衛本能がもたらす宿命~」
https://sicambre.seesaa.net/article/201310article_21.html
についてはこのブログで取り上げました。

 今回は心臓病の起源を進化学的に解明するという趣旨になっています。哺乳類の心臓の筋力は強力になり、哺乳類は長時間の運動が可能となりました。この強力な心臓を人類も受け継ぎました。しかし、この強力な心臓の一部に異常をきたすだけで、命に関わることもあります。人類は直立二足歩行により下半身に血液が溜まりやすくなり、脳の血液不足を防ぐために心臓は負担を強いられるようになって、心臓病の危険性が高まった、とのことです。

 また、ホモ属の出現・脳の巨大化が、N-グリコリルノイラミン酸(Gc)を失ったことによるものだっただろうということは、人類の心筋梗塞の可能性を高めました。肉食や糖分の摂取などによりGcが血管に入ると、Gcを失った人類においては血管の壁に炎症が起きて傷つきます。その傷からコレステロールが入って蓄積されるので、心筋梗塞の危険性が高まる、とのことです。近年の飽食により、人間がGcを体内に取り入れることが増えたので、心臓病の危険性が高まっている、とも指摘されています。また、胎児の段階で栄養不足だと、成人後に心臓病の可能性が高まる、という説も紹介されていました。心臓の細胞は胎児期にのみ分裂するので、栄養不足だと心臓の細胞が死んでしまい、誕生後に栄養が充分でも心臓病になりやすい、とのことです。

 疑問に思ったのは、人類とチンパンジーの共通祖先の歩行様式が現生チンパンジーのそれ(ナックル歩行)と同じだった、との解説です。近年のアルディピテクス=ラミダスについての詳細な研究からは、人類とチンパンジーの共通祖先の歩行様式がナックル歩行だったのか、疑問も呈されています。このように疑問に思う点もありましたし、芸能人を出演させての小芝居も不要だと私は考えていますが、この『病の起源』シリーズの出来は全体的にはなかなかよかったと思います。

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