NHKスペシャル『病の起源』第3集「うつ病~防衛本能がもたらす宿命~」
今年5月に放送されたNHKスペシャル『病の起源』の続きです。5月に放送された
プロローグ「人類進化700万年の宿命」
https://sicambre.seesaa.net/article/201305article_20.html
第1集「がん~人類進化が生んだ病~」
https://sicambre.seesaa.net/article/201305article_21.html
第2集「脳卒中~早すぎた進化の代償~」
https://sicambre.seesaa.net/article/201305article_28.html
についてはこのブログで取り上げました。
今回は鬱病の起源を進化学的に解明するという趣旨になっています。日本でも近年鬱病が急増しているとのことですが、その急増分のうちのかなりは、じゅうらい見落とされていたのではないか、という疑問も残ります。今回は、鬱病発症の仕組みと、その起源が5億年以上前の魚類までさかのぼることを説明しています。扁桃体の暴走によるという鬱病についての解説や、鬱病の起源が5億年以上前までさかのぼるという見解の妥当性を正確に判断できるだけの見識は私にはありませんが、大きく間違っているということはなさそうだな、とは思いました。
また、5億年以上前の魚類に現れた、外敵への警戒に起因する鬱病発症の仕組みに、哺乳類の出現が新たな要因を加えた、と解説されています。集団生活を送る哺乳類は孤立するとストレスを感じるようになり、それも鬱病発症の要因になった、というわけです。また、人類の出現により新たな鬱病発症の要因が生じます。それは、人類の生存に役立った、恐怖の記憶でした。さらに、人類の脳にブローカ野が出現して言語の使用が可能になると、直接的な恐怖体験だけではなく、他者の語る恐怖体験も鬱病発症の要因となりました。こうした解説についても、その妥当性を正確に判断できるだけの見識は私にはありませんが、こちらも大きく間違っているということはなさそうだな、とは思いました。
一方、人類は鬱病の発症を抑える仕組みを持っていたことも指摘されています。それは平等な分配を原則とする社会だった、というのが専門家の解説です。平等な在り様が扁桃体の暴走を抑え、平等は進化的に有利だというわけです。40万年前頃に本格的に狩猟を始めた人類は、狩猟にあたって結束が必要だったため、平等が志向された、と解説されています。ところが、農耕中心の社会へと移行し、貧富の差が拡大したことにより、人類は再び鬱病の発症しやすい社会へと移行していった、というのが今回提示された見通しです。また、立場の高い人よりも低い人の方がストレスを受けやすく、鬱病を発症しやすい、という傾向も指摘されます。こうした解説については、更新世人類社会の在り様についての評価も含めて、今後も検証を要するのではないか、というのが正直な感想です。疑問がないわけではありませんが、全体的にはなかなか丁寧な作りになっていてよかったと思います。
プロローグ「人類進化700万年の宿命」
https://sicambre.seesaa.net/article/201305article_20.html
第1集「がん~人類進化が生んだ病~」
https://sicambre.seesaa.net/article/201305article_21.html
第2集「脳卒中~早すぎた進化の代償~」
https://sicambre.seesaa.net/article/201305article_28.html
についてはこのブログで取り上げました。
今回は鬱病の起源を進化学的に解明するという趣旨になっています。日本でも近年鬱病が急増しているとのことですが、その急増分のうちのかなりは、じゅうらい見落とされていたのではないか、という疑問も残ります。今回は、鬱病発症の仕組みと、その起源が5億年以上前の魚類までさかのぼることを説明しています。扁桃体の暴走によるという鬱病についての解説や、鬱病の起源が5億年以上前までさかのぼるという見解の妥当性を正確に判断できるだけの見識は私にはありませんが、大きく間違っているということはなさそうだな、とは思いました。
また、5億年以上前の魚類に現れた、外敵への警戒に起因する鬱病発症の仕組みに、哺乳類の出現が新たな要因を加えた、と解説されています。集団生活を送る哺乳類は孤立するとストレスを感じるようになり、それも鬱病発症の要因になった、というわけです。また、人類の出現により新たな鬱病発症の要因が生じます。それは、人類の生存に役立った、恐怖の記憶でした。さらに、人類の脳にブローカ野が出現して言語の使用が可能になると、直接的な恐怖体験だけではなく、他者の語る恐怖体験も鬱病発症の要因となりました。こうした解説についても、その妥当性を正確に判断できるだけの見識は私にはありませんが、こちらも大きく間違っているということはなさそうだな、とは思いました。
一方、人類は鬱病の発症を抑える仕組みを持っていたことも指摘されています。それは平等な分配を原則とする社会だった、というのが専門家の解説です。平等な在り様が扁桃体の暴走を抑え、平等は進化的に有利だというわけです。40万年前頃に本格的に狩猟を始めた人類は、狩猟にあたって結束が必要だったため、平等が志向された、と解説されています。ところが、農耕中心の社会へと移行し、貧富の差が拡大したことにより、人類は再び鬱病の発症しやすい社会へと移行していった、というのが今回提示された見通しです。また、立場の高い人よりも低い人の方がストレスを受けやすく、鬱病を発症しやすい、という傾向も指摘されます。こうした解説については、更新世人類社会の在り様についての評価も含めて、今後も検証を要するのではないか、というのが正直な感想です。疑問がないわけではありませんが、全体的にはなかなか丁寧な作りになっていてよかったと思います。
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