墓に花を供えた最古の証拠

 ナトゥーフィアン(ナトゥーフ文化)期の遺跡で発見された、花を供えた墓についての研究(Nadel et al., 2013)が報道されました。この研究では、イスラエル北部のカルメル山にあるラケフェット洞窟の墓について報告されています。この洞窟の墓には花が供えられており、年代は13700~11700年前頃で、ナトゥーフィアン期(15000~11500年前頃)のものとなります。ナトゥーフィアン遺跡ではレヴァントにおける最初の共同墓地が発見されており、数十人もの埋葬が広い範囲で確認されています。13700~11700年前頃という年代は、ネアンデルタール人の骨に花粉が共伴していたという、7万年前頃のシャニダール4号の事例を除けば人類最古となりますが、そもそも近年では、類例がその後何万年もの間確認できないこともあって、遺体に花を供えたというシャニダール4号についての見解は疑問視するのが有力となっています。

 しかし、穴の壁が泥の薄板で覆われているラケフェット洞窟の墓の場合、4基並んだ墓に花が供えられており、そのうち遺体のあった2基には、遺体の下に花が供えられていた痕跡が確認されました。それらの植物は、サルビア属やシソ科やゴマノハグサ科のものです。こうした墓を造ることは、洗練された計画を意味しており、更新世末の重大な変化を受けた、複雑な先農耕社会を反映している、とこの研究では指摘されています。なお、上記の研究・報道ともに、花が供えられていたというシャニダール4号の事例については懐疑的なのですが、上記の報道でも指摘されているように、シャニダール4号からナトゥーフィアンまで5万年以上、墓に花を供えた例が確認されていないとはいっても、それは発見されていないだけだ、という可能性もまだ残っています。


参考文献:
Nadel D. et al.(2013): Earliest floral grave lining from 13,700–11,700-y-old Natufian burials at Raqefet Cave, Mt. Carmel, Israel. PNAS, 110, 29, 11774-11778.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1302277110

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