水谷千秋『継体天皇と朝鮮半島の謎』
文春新書の一冊として、文藝春秋社より2013年7月に刊行されました。異例の経緯で即位し、「新王朝」の祖と考えている人も少なくないだろう継体について、数少ない文献と、考古学の研究成果および当時の朝鮮半島情勢とを総合し、謎を解明しようとする意欲的な新書になっています。文献から継体の実像を探るには限界があるので、考古学的成果を活用するのは当然とも言えますが、本書では、近年の考古学的成果が大きく取り入れられており、かなり考古学の比重が高くなっています。多くの研究者が真の継体陵と考えている今城塚古墳については、報道でも大きく扱われたことがありますが、本書ではそれにとどまらず、九州の有明海沿岸勢力との関係など、考古学的成果が幅広く紹介されているので、その意味でも有益な一冊になっています。
ただ、疑問も少なからずあり、系譜をはじめとして継体についての文献はどこまで事実に基づいているのか、という問題があります。本書では、継体の系譜と考古学的成果から、継体の祖先の陵墓が推定されているのですが、継体の系譜がどこまで事実に基づいているのか、継体即位後のある時期に、その前の王統の系譜と継体の系譜が結びつけられたのではないか、といった疑問が残ります。さらに言えば、継体の前の王統にしても、どこまで現代に伝えられているようなものと一致していたのか、疑問があります。また、反継体勢力としての葛城氏と親継体勢力としての非葛城氏といった区分にしても、継体の即位の前後に、葛城氏や大伴氏や物部氏といった氏族にどこまで実態があったのか、という疑問も残ります。まあ、文字記録の少ない時代だけに、かなりの程度は現在残っている文字記録を前提としないと、叙述が困難という事情はありますが。
ただ、疑問も少なからずあり、系譜をはじめとして継体についての文献はどこまで事実に基づいているのか、という問題があります。本書では、継体の系譜と考古学的成果から、継体の祖先の陵墓が推定されているのですが、継体の系譜がどこまで事実に基づいているのか、継体即位後のある時期に、その前の王統の系譜と継体の系譜が結びつけられたのではないか、といった疑問が残ります。さらに言えば、継体の前の王統にしても、どこまで現代に伝えられているようなものと一致していたのか、疑問があります。また、反継体勢力としての葛城氏と親継体勢力としての非葛城氏といった区分にしても、継体の即位の前後に、葛城氏や大伴氏や物部氏といった氏族にどこまで実態があったのか、という疑問も残ります。まあ、文字記録の少ない時代だけに、かなりの程度は現在残っている文字記録を前提としないと、叙述が困難という事情はありますが。
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