木下正史『日本古代の歴史1 倭国のなりたち』

 まだ日付は変わっていないのですが、7月28日分の記事として掲載しておきます。『日本古代の歴史』全6巻の第1巻として2013年7月に吉川弘文館より刊行されました。『日本古代の歴史』の編纂意図は、第1巻~第5巻までは政治史を軸にした時系列の通史とし、第6巻は古代全体の時代像を示す、とのことです。第5巻は『王朝貴族と国風文化』とのことで、院政期の前までを対象とするようです。院政期からが中世というのが現在の有力な時代区分でしょうから、妥当なところでしょうか。この第1巻は、日本列島に人類が移住してきた更新世末期~藤原京の時代というか平城京に遷都する直前までを対象としており、全体的に穏当な叙述になっているように思います。

 当然のことながら、更新世末期~縄文時代までは依拠すべき史料がありませんし、弥生時代以降も、後世と比較して文字記録はあまりにも貧弱なので、考古学の研究成果を主とした叙述になっています。もちろん、1世紀以降の叙述では中華地域の史料を、5世紀以降の叙述では金石文や『日本書紀』を活用するなど、時代がくだるにつれて文字記録に依拠する割合が増えてはいますが、最後まで考古学の研究成果に依拠しているところが多分にあるので、第2巻が『飛鳥と古代国家』であることを考えると、第1巻は継体朝か欽明朝で区切ってもよかったのではないかな、とも思います。日本の考古学界では放射性炭素年代への不信感が強そうなことを示唆する叙述になっていたことが、注目されます。まあ、暦年代への較正は今後の研究の進展にたいへん期待できそうな分野ですから、どのような暦年代が提示されるのか、楽しみも大いにあります。

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