秋山哲雄『敗者の日本史7 鎌倉幕府滅亡と北条氏一族』

 まだ日付は変わっていないのですが、7月15日分の記事として掲載しておきます。『敗者の日本史』全20巻の第7巻として、2013年5月に吉川弘文館より刊行されました。表題が「鎌倉幕府滅亡」なので、鎌倉時代後半についての記述が多くなっているのですが、鎌倉時代前半についてもそれなりに言及されており、鎌倉時代の政治・制度史にもなっています。鎌倉幕府は滅亡したと言われますが、本書では、鎌倉幕府の制度など政治的遺産は後世に継承されており、鎌倉幕府の滅亡は北条一族の滅亡ではあったものの、鎌倉幕府の奉行人が建武政権や室町幕府でも同様の職務を担ったことが指摘されています。

 鎌倉幕府滅亡の要因は、モンゴル軍を撃退したにも関わらず、敵の領地を占領したわけではないために、武士や寺社へ充分に恩賞を与えることができず、幕府への不満を招来してしまったことである、というのが古典的というか通俗的な説明でしょうが、本書を読むと、鎌倉幕府滅亡の要因は次のように考えるとよいのかな、と思います。鎌倉幕府には全国政権としての力量がなく、幕府要人の多数派も全国政権を目指す意思がなかったものの(全国政権を目指した安達泰盛は霜月騒動で滅ぼされました)、モンゴル襲来を契機に実質的には全国政権的な役割を担わざるを得なくなり、それにも関わらず幕府要人の多数には全国政権への展望というか意識が希薄だったため、全国政権に相応しい制度の構築ができず、不満を抱く全国の人々が幕府をその対象としたことが、鎌倉幕府滅亡の根本的要因なのかもしれません。

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