ネアンデルタール人と現生人類との交雑の可能性が大きく取り上げられてから3年

 これは5月8日分の記事として掲載しておきます。ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)と現生人類(ホモ=サピエンス)との交雑の可能性を指摘した『サイエンス』論文の発表からもう3年になります(関連記事)。じつは、3年前の『サイエンス』論文以前より、遺伝学の分野ではネアンデルタール人と現生人類との交雑を認める見解が提示されていましたが(関連記事)、少数派だったことは否定できませんし、一般向けに交雑肯定説が大々的に取り上げられることはまずなかったので、専門家の間でも非専門家の間でも、交雑否定説が優勢だったように思います。

 交雑否定説が優勢だったのは、現代人・化石現代人・ネアンデルタール人のミトコンドリアDNAの解析では、現代人にネアンデルタール人由来と思われる系統が発見されなかったということと、交雑肯定説の根拠は、現代人同士の核DNAの比較であり、ネアンデルタール人の核DNAとの直接的な比較ではなかった、ということのためでした。それが、ネアンデルタール人の核DNAの詳細な解析と現代人との直接的な比較により、ネアンデルタール人と現生人類との交雑の可能性が高いとされたわけですから、これ以降、一気に交雑説が優勢になった感があります。古人類学の一般向け書籍では、1990年代後半~2009年頃までの一時期、交雑否定説が圧倒的に優性だったように記憶していますが、2010年後半以降に刊行されたものでは、おおむね交雑肯定説が認められているように思います。このように見解が変わっていく様を同時代に体験するのは、なかなか興奮します。

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