渡邊大門『秀吉の出自と出世伝説』
まだ日付は変わっていないのですが、5月30日分の記事として掲載しておきます。歴史新書の一冊として洋泉社より2013年5月に刊行されました。秀吉の出自を中心として、秀吉の人物像を歴史学的な成果に基づいて一般向けに提示した一冊となっています。民俗学的成果も活用しての、近年の歴史学の提示する秀吉像においては、その出自に非農業民的性格が指摘され、秀吉の大出世と言動の要因がその出自に求められる傾向がありますか、本書はそうした傾向に批判的であり、あくまでも秀吉個人の能力・性格を重視する見解を提示しています。そもそも、中世以前においても、農業だけで生計を立てていた、と言えるような人がどれだけいたのか、という疑問もあります。
もちろん本書も、秀吉の出自がその個性を形成するうえで重要だったことは否定していませんが、秀吉と似たような環境で育った者も少なくないわけで、秀吉の大出世の要因として、あくまでも秀吉の能力・性格を重視する、という立場をとっています。本書の提示する秀吉像は、貧しい環境で生まれ育ち、優れた能力の持ち主で出世欲がたいへん強く、粘り強くてたいへん残忍である、というものです。私にとってはおおむね違和感のない秀吉像ですが、近年において低下しているように思われる秀吉の人気が、本書により回復するどころか、逆に低下する一因になりそうなのは残念です。まあ、秀吉の所業からすると、昭和が終わる頃までの秀吉の高い人気こそ異常だった、とも言えそうですが。
もちろん本書も、秀吉の出自がその個性を形成するうえで重要だったことは否定していませんが、秀吉と似たような環境で育った者も少なくないわけで、秀吉の大出世の要因として、あくまでも秀吉の能力・性格を重視する、という立場をとっています。本書の提示する秀吉像は、貧しい環境で生まれ育ち、優れた能力の持ち主で出世欲がたいへん強く、粘り強くてたいへん残忍である、というものです。私にとってはおおむね違和感のない秀吉像ですが、近年において低下しているように思われる秀吉の人気が、本書により回復するどころか、逆に低下する一因になりそうなのは残念です。まあ、秀吉の所業からすると、昭和が終わる頃までの秀吉の高い人気こそ異常だった、とも言えそうですが。
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