『天智と天武~新説・日本書紀~』第2集来月末発売

 これは5月29日分の記事として掲載しておきます。『ビッグコミック』2013年6月10日号に1ページの広告が掲載されていましたが、『天智と天武~新説・日本書紀~』第2集が来月末に発売されるそうです。広告には、聖徳太子とされてきた、かつて1万円札にも用いられていた肖像画と、『勝鬘経』を読んでいる蘇我入鹿の姿(第1話よりの引用)が掲載されています。広告には、

歴史教科書から
「聖徳太子」は消えつつあります。
そりゃそうでしょう。
聖徳太子は蘇我入鹿なんですから。


 という文章が掲載されています。ただ、これまで様々な宣伝や『天智と天武~新説・日本書紀~』を取り上げた雑誌の記事などでは、この作品が聖徳太子=蘇我入鹿という設定になっている、と紹介されていますが、作中では、第19話の時点で聖徳太子=蘇我入鹿と明示した描写はありません(第1話で強く示唆されてはいますが)。蘇我入鹿が聖徳太子だとすると、なぜ蘇我入鹿の事績・人物像が用明天皇の息子の厩戸王として語られるようになったのか、と疑問に思いますが、作中ではまだその手がかりが提示されていません。

 そもそも、作中では厩戸王が実在の人物なのかも不明で、上宮王家滅亡事件も現時点では一切語られていません。上宮王家滅亡事件の主導者の候補としては、蘇我入鹿や皇極帝(斉明帝)が考えられますが、作中での両者の人物像からすると、上宮王家を主導的に滅ぼすような人物とも思えません。あるいは、上宮王家滅亡事件は、蘇我本宗家の滅亡した乙巳の変を参考にした創作ということなのかもしれません。そうだとすると、厩戸王・山背大兄王や上宮王家自体も実在しなかった、ということになるのかもしれません。聖徳太子創作の過程は、大海人皇子(天武天皇)・鸕野讚良皇女(持統天皇)・藤原不比等らも関わって、心理戦を中心とする人間模様として描かれそうで、この作品の見せ場となるでしょう。

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