NHKスペシャル『病の起源』第1集「がん~人類進化が生んだ病~」

 まだ日付は変わっていないのですが、5月21日分の記事として掲載しておきます。プロローグ
https://sicambre.seesaa.net/article/201305article_20.html
を見て覚悟はできていましたが、相変わらずの芸能人を起用しての過剰な演出が見られたのは残念でした。こうした演出がなくても、分かりやすくすることは可能だと思うのですが。今回の疑問点は、プロローグの時と同じく、タンザニアのハッザ族を太古の人類の生活を色濃く残す人々と紹介していることと、ラマルク主義的な、**のために進化した、という表現が相変わらず用いられていたことです。また、アウストラロピテクス属のような初期人類は、オスがメスや子供に食料を持ち帰っていた、という今回取り上げられていた仮説は、有力視されているものの、正直なところ、私は疑問に思っています。こうした性別分業が人類史においていつから行われていたのか、まだ確証はなく、たとえばネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)の社会には、性別・年齢による分業はなかった、とする見解もあります。
https://sicambre.seesaa.net/article/200612article_7.html

 6万年前頃の出アフリカまで人類は日差しの強いアフリカで過ごしてきた、という説明は、6万年前頃という現生人類(ホモ=サピエンス)の出アフリカの年代の見直しに関する問題はさておくとしても、6万年前頃よりもずっと前に人類はユーラシアに進出しているわけで、ここでの「人類」とは、現代人の祖先もしくは現代人の主要な遺伝子源となった祖先集団という意味なのでしょうが、誤解を招く表現だと思います。また、紫外線・ビタミンDと癌との関係についての研究を取り上げながら、肌の色の濃さとの関係について触れなかったのは疑問の残るところです。このように疑問点もありますが、基本的にはなかなか良質な番組になっていると思います。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック