NHKスペシャル『病の起源』プロローグ「人類進化700万年の宿命」

 まだ日付は変わっていないのですが、5月20日分の記事として掲載しておきます。5年前にも同じ題名のNHKスペシャルのシリーズが放送され、私も2回ほどこのブログでとりあげたことがありますが、今回もシリーズものだそうで、病の起源を進化学的に解明しつつ、その(開発されつつある)治療法を紹介していく、という趣旨のようです。
https://sicambre.seesaa.net/article/200804article_16.html
https://sicambre.seesaa.net/article/200804article_24.html

 このプロローグはいくつか人間の病気を取り上げ、その起源を人類の進化史に位置づけようとしています。相変わらず、芸能人を起用しての過剰な演出が見られたのは残念でしたが、NHKスペシャルらしく基本的には真面目な作りになっていました。ただ、疑問点もあり、一般向け番組としてある程度仕方がないのかもしれませんが、直立二足歩行の定着を食料運搬のため、と芸人に発言させた台本には疑問が残ります。馬場悠男博士の発言を注意深く聞けば、そうしたラマルク主義的な誤解はせずにすむのですが、配慮に欠けた演出のように思います。同様のことは、免疫とアレルギーの問題でも見られました。

 タンザニアのハッザ族を、太古の人類の生活を色濃く残す人々と紹介していることも疑問で(同様の疑問をこのブログでも度々述べてきましたが)、農耕民など定住民と接触し、その影響を長い間(とはいっても、人類史ではごく最近のことではありますが)受けてきた現代の採集狩猟民が、農耕民の存在しなかった太古の生活を色濃く残しているか否か、確証はないと思います。確かに、現代の都市住民よりは、現代の採集狩猟民の方が、まだ太古の人々に近い生活をしているとは思いますし、太古の生活の復元に限外がある以上、太古の人々の生活を推測するにあたって、現代の採集狩猟民の生活を参考にするのは、ある程度仕方のないところがあるとは思いますが。

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