篠田謙一・斎藤成也・磯田道史「DNA最新研究が解明した日本人の不思議な起源」
まだ日付は変わっていないのですが、4月2日分の記事として掲載しておきます。『文藝春秋』2013年4月号に掲載された鼎談です。とくに目新しい情報はなかったのですが、近年の遺伝学的成果に基づく日本人の起源論について、一般読者向けに平易に解説されています。これは、三氏、とくに遺伝学の専門家である篠田氏と斎藤氏が意識してそうしている、ということでもあるのでしょうが、編集者の功績も大きいのかもしれません。篠田氏は、現生人類(ホモ=サピエンス)アフリカ単一起源説はほぼ確定したと述べており、ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)やデニソワ人などといった異なる系統の人類との一定水準以上の交雑はあったにしても、現生人類アフリカ単一起源説が否定されることは今後もないでしょう。
この鼎談では、日本列島の遺伝的多様性が強調されていますが、地理的範囲・遺伝的区分の基準をどう設定するのか、という問題とも関係しており、慎重な検証が必要ではないだろうか、とは思います。学界では不評というかあまりまともに相手にされていなかった感もある騎馬民族征服説はこの鼎談でも取り上げられていますが、現代日本におけるY染色体の多様性からも否定されています。私も騎馬民族征服説にはずっと否定的なのですが(騎馬民族なる概念の曖昧さが問題だと思います)、騎馬民族征服説の側から、騎馬民族による征服の影響はおもに支配層にとどまり、複雑な日本列島の地形では支配層の遺伝子が容易には拡散しなかった、という批判もあるのではないか、と考えると、現代日本人のY染色体の多様性は、騎馬民族征服説を否定する根拠としては、強力なものではないだろう、とも思います。
この鼎談では、日本列島の遺伝的多様性が強調されていますが、地理的範囲・遺伝的区分の基準をどう設定するのか、という問題とも関係しており、慎重な検証が必要ではないだろうか、とは思います。学界では不評というかあまりまともに相手にされていなかった感もある騎馬民族征服説はこの鼎談でも取り上げられていますが、現代日本におけるY染色体の多様性からも否定されています。私も騎馬民族征服説にはずっと否定的なのですが(騎馬民族なる概念の曖昧さが問題だと思います)、騎馬民族征服説の側から、騎馬民族による征服の影響はおもに支配層にとどまり、複雑な日本列島の地形では支配層の遺伝子が容易には拡散しなかった、という批判もあるのではないか、と考えると、現代日本人のY染色体の多様性は、騎馬民族征服説を否定する根拠としては、強力なものではないだろう、とも思います。
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