アシューリアンの時系列的な比較
これは2月5日分の記事として掲載しておきます。アシューリアンの時系列的な比較についての研究(Beyene et al., 2013)が報道されました。この研究では、エチオピア南部のKonso層で新たに年代の推定された175万~100万年前頃の石器が報告され、他の地域・年代のアシューリアンと比較されています。この研究では、じゅうらい詳細な比較がなされていなかった、最初期のアシューリアンと時代の下ったアシューリアンとの比較の結果かが報告されています。175万年前頃のアシューリアンとなると、これまで最古とされてきた、ケニアの西トゥルカナにあるKokiselei4遺跡のNachukui層で発見された石器群とほぼ同じ年代ということになります(関連記事)。
Konso層の石器群の特徴は、大型ピックと粗雑な両面・単面加工石器の混在です。Konso層の握斧(両面加工石器)については、時代が下るにつれて剥離の痕が増えていくなど、加工法が洗練されていく様子が窺えます。一方、大型ピックについては、そうした傾向が顕著には認められませんでした。この研究では、大型ピックと握斧はアシューリアンの最初期の段階から本質的な構成要素だったものの、おそらくその機能は違っていたのではないか、と示唆されています。こうした石器の比較から、この研究では、アシューリアンの始まりという行動学的革新はある地域で確立し、ホモ=エレクトスのような形態の出現と並行した出来事ではないか、示唆されています。
現時点での考古学的・形質人類学的証拠からは、アシューリアンと(広義の)エレクトスの出現を関連づけるというか、エレクトスにより初めてアシューリアンが作られた、と推測するのが妥当だろう、とは思います。ただ、さまざまな石器の製作の大前提として、それぞれに対応した解剖学的構造と認知能力があることは当然ですが、文化には社会的蓄積・慣行という性格も強く、また具体例として、ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)と現生人類(ホモ=サピエンス)とが共に似たような中部旧石器文化の担い手だったことや、最初期のサピエンス(ホモ=サピエンス=イダルツ)がアシューリアンと共伴していたことなどからも、さまざまな石器を安易に人類種区分と対応させることには慎重でなければならないだろう、とも思います。
参考文献:
Beyene Y. et al.(2013): The characteristics and chronology of the earliest Acheulean at Konso, Ethiopia. PNAS, 110, 5, 1584-1591.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1221285110
Konso層の石器群の特徴は、大型ピックと粗雑な両面・単面加工石器の混在です。Konso層の握斧(両面加工石器)については、時代が下るにつれて剥離の痕が増えていくなど、加工法が洗練されていく様子が窺えます。一方、大型ピックについては、そうした傾向が顕著には認められませんでした。この研究では、大型ピックと握斧はアシューリアンの最初期の段階から本質的な構成要素だったものの、おそらくその機能は違っていたのではないか、と示唆されています。こうした石器の比較から、この研究では、アシューリアンの始まりという行動学的革新はある地域で確立し、ホモ=エレクトスのような形態の出現と並行した出来事ではないか、示唆されています。
現時点での考古学的・形質人類学的証拠からは、アシューリアンと(広義の)エレクトスの出現を関連づけるというか、エレクトスにより初めてアシューリアンが作られた、と推測するのが妥当だろう、とは思います。ただ、さまざまな石器の製作の大前提として、それぞれに対応した解剖学的構造と認知能力があることは当然ですが、文化には社会的蓄積・慣行という性格も強く、また具体例として、ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)と現生人類(ホモ=サピエンス)とが共に似たような中部旧石器文化の担い手だったことや、最初期のサピエンス(ホモ=サピエンス=イダルツ)がアシューリアンと共伴していたことなどからも、さまざまな石器を安易に人類種区分と対応させることには慎重でなければならないだろう、とも思います。
参考文献:
Beyene Y. et al.(2013): The characteristics and chronology of the earliest Acheulean at Konso, Ethiopia. PNAS, 110, 5, 1584-1591.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1221285110
この記事へのコメント