手首の比較が支持するフロレシエンシス新種説
これは2月19日分の記事として掲載しておきます。手首の比較から、フローレス島のリアンブア洞窟で発見された更新世の人骨群は、病変の現生人類(ホモ=サピエンス)ではなく新種ホモ=フロレシエンシスであるという説が支持される、との研究を『ネイチャー』の研究ハイライトで知りましたが、無料では冒頭しか読めず、どの研究なのかなと探してみたところ、該当すると思われる研究(Orr et al., 2012)を見つけました。フロレシエンシスの正基準標本であるLB1の手根骨には、現生人類(ホモ=サピエンス)やネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)のそれに見られる派生的特徴が見られず、それが新種説の重要な根拠とされています。
この研究では、リアンブア洞窟の更新世の地層で発掘された人骨のうち、新たに手根骨が分析・比較され、そのうち少なくとも1個体分の人骨はLB1のものではありません。詳しく述べると、右側の有頭骨(第三中手骨につながる丸い頭状の形の手根骨)一つと有鈎骨(第4・5本目の指と繋がっている手首の骨)二つです。この新たに分析対象となったリアンブア洞窟の手根骨は、LB1のそれより小さいのですが、形態学的にはほぼ同じです。この新たに分析された有頭骨は、現生類人猿・アウストラロピテクス属の各種・LB1・ネアンデルタール人・現生人類のそれと比較され、ネアンデルタール人・現生人類には見られる派生的特徴が認められず、現生類人猿・アウストラロピテクス属の各種・LB1と同じく、原始的特徴が認められました。この研究の形態測定学的分析によると、新たに分析された有頭骨はLB1のそれとの密接な類似性を示しています。
また、新たに分析されたリアンブア洞窟出土の有鈎骨には、ネアンデルタール人と現生人類のそれと比較して、楕円形の断面特性が欠けているなど、派生的特徴に欠け、原始的特徴が見られます。総合的に考えると、リアンブア洞窟の新たに分析された手根骨の特徴は、LB1などリアンブア洞窟の更新世の人骨群が病変の現生人類であるという説を否定します。またこの研究では、手根骨の分析から、フロレシエンシスの系統は、ネアンデルタール人と現生人類とが分岐する以前に、現生人類・ネアンデルタール人の共通祖先の系統と分岐したという仮説が支持される、と主張されています。依然として一部で根強い病変現生人類説ですが、やはり新種説の優勢は今後も変わらないでしょう。
参考文献:
Orr CM. et al.(2013): New wrist bones of Homo floresiensis from Liang Bua (Flores, Indonesia). Journal of Human Evolution, 64, 2, 109–129.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2012.10.003
この研究では、リアンブア洞窟の更新世の地層で発掘された人骨のうち、新たに手根骨が分析・比較され、そのうち少なくとも1個体分の人骨はLB1のものではありません。詳しく述べると、右側の有頭骨(第三中手骨につながる丸い頭状の形の手根骨)一つと有鈎骨(第4・5本目の指と繋がっている手首の骨)二つです。この新たに分析対象となったリアンブア洞窟の手根骨は、LB1のそれより小さいのですが、形態学的にはほぼ同じです。この新たに分析された有頭骨は、現生類人猿・アウストラロピテクス属の各種・LB1・ネアンデルタール人・現生人類のそれと比較され、ネアンデルタール人・現生人類には見られる派生的特徴が認められず、現生類人猿・アウストラロピテクス属の各種・LB1と同じく、原始的特徴が認められました。この研究の形態測定学的分析によると、新たに分析された有頭骨はLB1のそれとの密接な類似性を示しています。
また、新たに分析されたリアンブア洞窟出土の有鈎骨には、ネアンデルタール人と現生人類のそれと比較して、楕円形の断面特性が欠けているなど、派生的特徴に欠け、原始的特徴が見られます。総合的に考えると、リアンブア洞窟の新たに分析された手根骨の特徴は、LB1などリアンブア洞窟の更新世の人骨群が病変の現生人類であるという説を否定します。またこの研究では、手根骨の分析から、フロレシエンシスの系統は、ネアンデルタール人と現生人類とが分岐する以前に、現生人類・ネアンデルタール人の共通祖先の系統と分岐したという仮説が支持される、と主張されています。依然として一部で根強い病変現生人類説ですが、やはり新種説の優勢は今後も変わらないでしょう。
参考文献:
Orr CM. et al.(2013): New wrist bones of Homo floresiensis from Liang Bua (Flores, Indonesia). Journal of Human Evolution, 64, 2, 109–129.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2012.10.003
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