旧人と新人 氷期の交替劇

 まだ日付は変わっていないのですが、11月8日分の記事として掲載しておきます。赤澤威氏の解説による表題の記事が、昨日付の読売新聞朝刊に掲載されました。この記事は、以前このブログでも取り上げた、科学研究費補助金「新学術領域研究」の一環である「ネアンデルタールとサピエンス交替劇の真相:学習能力の進化に基づく実証的研究」
http://www.koutaigeki.org/index.html
に基づいており、この総合的な研究については、以前にもこのブログで取り上げたことがあります。
https://sicambre.seesaa.net/article/201101article_19.html
https://sicambre.seesaa.net/article/201104article_6.html

 この記事では、ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)と現生人類(ホモ=サピエンス)との「交替劇」の要因は、学習能力・創造能力の違いにあるのではないか、という見解が主張されています。これは、現生人類のアフリカ単一起源説が圧倒的に優勢になっていった1990年代以降の主流的見解に沿ったものだ、と言えるでしょう。この主流的見解では、ネアンデルタール人の絶滅と現生人類の繁栄が説明されるために、両者の違いができるだけ強調されます。しかし近年では、ネアンデルタール人も象徴的行動が認められるようになるなど、ネアンデルタール人と現生人類との違いは1990年代以降の主流的見解が想定していたほど大きくなかったのではないか、との見解も増えているように思います。これには、考古学的成果だけではなく、高頻度ではないにしても、ネアンデルタール人と現生人類との間には交雑があった可能性が高い、と広く認められるようになったことも影響しているのではないか、と思います。この記事によると、今月18日に公開講演会が予定されているとのことで、
http://www.koutaigeki.org/11.18.html
著名な研究者の講演もあるようですから、時間があれば是非行きたいものです。

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