大河ドラマ『平清盛』第43回「忠と孝のはざまで」
まだ日付は変わっていないのですが、11月6日分の記事として掲載しておきます。今回は、重盛が清盛と後白河院との間で苦悩し、さらに疲弊していく様とともに、自らの夢の実現を目指し修羅の道を進む清盛と、それを案じる息子の重盛の清さ・「常識」という対比が中心となって描かれました。実質的には重盛が主人公になった感があり、重盛役の窪田正孝氏の好演により、見応えのある内容になったのではないか、と思います。重盛が後白河院に近い存在だったのは確かでしょうが、それは時子の息子たちに対抗するためでもあったのでしょう。この作品でも、重盛と時子の息子たちとの対立的関係は描かれてきましたが、この点はもっと強調されていてもよかったのではないか、と思います。また、重盛が後白河院の近臣的立場にあったことも、丁寧に描いておけばよかったのに、と残念でなりません。
重盛は父の清盛に基本的には従順でしたから、物語で描かれてきた、清盛と後白河院との対立に重盛が苦悩するという話は、完全な創作ではなくかなり史実に準拠したものだろう、と思います。その意味で、このところ描かれてきた重盛の苦悩の描写には、さほど問題はないように思います。気になったのは、重盛が清盛に諫言している場面の台詞が文語調だったことで、これまでの作風からすると、浮いていたところがありますが、重盛役の窪田氏の熱演により、勢いで押し切った感があります。この作品の重盛は人物造形・配役ともに成功しており、清らかな人柄の重盛・経子夫妻は、癖のある人物の多いこの作品において、重要な役割を担っていると思います。
前回と今回で西光・成親という後白河院の側近が退場となります。二人とも初登場時より清盛に冷淡な態度を見せており、西光のほうはここ数回で清盛にたいする憎悪をはっきりと示すようになりました。二人とも存在感のある演技でこの作品を盛り上げてくれただけに、なんとも寂しいものです。成親が斬首ではなく配流処分(配流先で殺されるだろうということは、同時代の少なからぬ人が悟っていたのでしょうが)となったのは、重盛の妻の経子が成親の妹あることと、現職の公卿であることに配慮したためであったのでしょう。
高倉帝と中宮の徳子の間に清盛にとっては孫となる皇子が生まれ、清盛は感激のあまり泣き出します。しかし、経宗・兼実ら平家ではない公卿たちは苦々しい様子で眺めています。一瞬だけしか映りませんでしたが、印象に残りました。伊豆では頼朝と政子の結婚を時政が認め、遮那王は尾張で元服して義経と名乗ります。この後の歴史の流れを知っていると、平家の没落が近いことが印象づけられ、いよいよ物語も終わりに近づいてきたのだな、と寂しくなります。乙前(祗園女御)はいよいよ最期が近づいてきたようですが、相変わらず若々しく見えるのはなんとも残念です。このところの政治劇はなかなか面白く、このまま最後までこれくらいの水準を維持してもらいたいものです。
重盛は父の清盛に基本的には従順でしたから、物語で描かれてきた、清盛と後白河院との対立に重盛が苦悩するという話は、完全な創作ではなくかなり史実に準拠したものだろう、と思います。その意味で、このところ描かれてきた重盛の苦悩の描写には、さほど問題はないように思います。気になったのは、重盛が清盛に諫言している場面の台詞が文語調だったことで、これまでの作風からすると、浮いていたところがありますが、重盛役の窪田氏の熱演により、勢いで押し切った感があります。この作品の重盛は人物造形・配役ともに成功しており、清らかな人柄の重盛・経子夫妻は、癖のある人物の多いこの作品において、重要な役割を担っていると思います。
前回と今回で西光・成親という後白河院の側近が退場となります。二人とも初登場時より清盛に冷淡な態度を見せており、西光のほうはここ数回で清盛にたいする憎悪をはっきりと示すようになりました。二人とも存在感のある演技でこの作品を盛り上げてくれただけに、なんとも寂しいものです。成親が斬首ではなく配流処分(配流先で殺されるだろうということは、同時代の少なからぬ人が悟っていたのでしょうが)となったのは、重盛の妻の経子が成親の妹あることと、現職の公卿であることに配慮したためであったのでしょう。
高倉帝と中宮の徳子の間に清盛にとっては孫となる皇子が生まれ、清盛は感激のあまり泣き出します。しかし、経宗・兼実ら平家ではない公卿たちは苦々しい様子で眺めています。一瞬だけしか映りませんでしたが、印象に残りました。伊豆では頼朝と政子の結婚を時政が認め、遮那王は尾張で元服して義経と名乗ります。この後の歴史の流れを知っていると、平家の没落が近いことが印象づけられ、いよいよ物語も終わりに近づいてきたのだな、と寂しくなります。乙前(祗園女御)はいよいよ最期が近づいてきたようですが、相変わらず若々しく見えるのはなんとも残念です。このところの政治劇はなかなか面白く、このまま最後までこれくらいの水準を維持してもらいたいものです。
この記事へのコメント
ブログのメンテ長かったですね、知らずに書いたコメントを消されてしまいがっくりきました。
大河も徐々に終盤を迎えつつ何やら年末も近い様な気分になってきましたし・・しかし、劉さんの解説によればラストは幻想的なんですよね?
どんなしめくくりになるのか想像がつきませんし心配です、視聴率はやや上がってきてホッとします。
この忠孝のシーンは、戦前の歴史教科書にも載っているほど有名との事で、とても勉強になりました~ちょっと泣けました。
後白河・・が今では家茂をやっていたとは思えない程適役に見えます(笑)
久々の常盤が母らしくなっていてよかったです。
乙前は・・妖怪なんで仕方ないです(笑)
後白河は、配役発表時にはこの作品最大の地雷になるのではないか、と懸念していたのですが、これまでのところは、予想よりもはるかによい出来になっていると思います。配役の妙と言うべきでしょうか。
昨晩、8,9話を見直してました。初回から7話までを消してしまったのが残念なのですが・・。ちょうど水仙の回で、今見直しても面白いです。
役者揃ってるし。
同時並行で年末まで見続けようかと思います。
今年は環境的に大河にハマる余裕がなくて・・・。冬籠りに丁度良い感じです(笑)
ただ、待賢門院や美福門院の場面は回想されることがなさそうですが。
最終回で流れるだろう、清盛・義朝・西行の階層場面はなかなか効果的なものになりそうな気がします。
管理人様と同様で、私も今年の大河『平清盛』については、終盤をむかえたいまでも楽しんで視聴できています。主人公夫妻のやや稚拙な演技には辟易する部分もありますが、これまで次々と現れては消えていった脇役の名演技、濃い演技、重厚な演技など記憶に残る部分も多く、手の込んだ丁寧な作りだと評価しています。また、カメラワークなども映画風と感じさせる凝った表現が多用されていて、玄人受けする部分は多いと思います。
ただ如何せん、ご承知のとおりの視聴率です。キャストやスタッフ諸氏のモチベーションと、それを支えようとするNHKの姿勢が最後までもたないのではないかと危惧していました。
ストーリー本の完結編も発刊されたこともあり、何とかゴールが見えてきたのかなと安堵していますが、今年の反動で、また来年度以降安易な大河の流れにつながるようだと残念です。
大河ドラマとしては前代未聞の低視聴率ですから、私も制作者側の士気低下を懸念していましたし、時代考証担当の一方の研究者から、そうした懸念が現実化しているのではないか、と窺わせるような内幕が語られたこともありました(その後該当のツイートは削除されたようですが)。
ただ、もう撮影も終わったようですし、良くも悪くこの作品らしさを維持したまま最終回を迎えることになりそうです。