NHKスペシャル『中国文明の謎』「第二集 漢字誕生 王朝交代の秘密」

 これは11月13日分の記事として掲載しておきます。前回の「第一集 中華の源流 幻の王朝を追う」
https://sicambre.seesaa.net/article/201210article_16.html
があまりにもひどい内容だったので、第二集も期待できそうにないな、と思っていたのですが、怖いもの見たさもあって視聴しました。今回は、漢字(甲骨文字)の使用法の変化を王朝交代と関連づけた内容となっていました。神意を占うための文字から他部族との連携・契約にも使用する文字への変化という番組で主張された見解について、その妥当性を的確に判断できるだけの学識は私にはとてもありませんが、理念化・単純化されすぎているのではないか、との疑問は残ります。

 周から殷(商)への「王朝交代」は『史記』の記述に沿った説明になっていましたが、周の視点からというか、周を正当化し殷の滅亡を当然視するような史観に基づいているであろう『史記』の記述がどこまで信用できるのか、疑問の残るところです。今回、殷の兵はほとんどまともに戦うことなくあっけなく崩れ、漢字を効果的に用いるなどして多部族と連携した周が、他部族に非寛容な殷を滅ぼしたかのような説明になっていましたが、孟子の逸話からも窺えるように、『尚書』に基づけば異なる歴史像を描けるのではないか、と思います。

 どうも、考古学的に殷王朝や夏王朝の実在が証明されたために(夏王朝の実在については、確定したとはとても言えないだろう、と私は考えていますが)、『史記』の記述も正しいのだ、という安直な判断が影響力を強めつつあるのではないか、と懸念されます。私がいくつかの一般向け概説書を読んだかぎりでは、考古学的成果も取り入れて、殷が他勢力と戦っている隙をついて周が殷を滅ぼした可能性が高い、と指摘する見解が多かったと記憶しているのですが、今回はそうした見解は取り入れられていませんでした。まあ、真相がどうだったのか、文字記録の少ない時代のことだけに、推測がたいへん難しいとは思いますが。

 また、他の「古代文明」の文字とは異なり、古くからある漢字は一貫して使われてきたと強調するような内容になっていましたが、表音文字なので文法の違いは当然あるにしても、アルファベットも漢字に負けないくらいの古さと一貫性が認められるのではないか、とも思います。NHKは、中国での取材が必要なので、中国の公的歴史観に従わねばならなかった、と弁明するかもしれませんが、どうも必要以上に中国というか漢人(中華)ナショナリズムに沿った内容になっているように思えます。中国のナショナリズムと関連して、今回も冒頭の語りで「中国は一つであり続けた」と述べられていましたが、そのさいの「中国」がどう定義されるのか、明示されませんでした。もう、このような虚仮威し的な手法が「日中友好」に貢献するような時代ではない、と思うのですが。

この記事へのコメント

みら
2012年11月12日 19:30
こんばんわ
もう13日分の記事の投稿ですか?ウエブリブログって日時設定自由なんですね~。
これ、開催中のトーハクの企画展がらみのなんでしょうか、仮面とか展示品の紹介をしてるし。
ちょっとナレーションがざっくりとしてましたね、しかしそれより中井貴一のピンクのボトムスが。
・・・これって、忠盛のイメージを取り払いたいんでしょうか(笑)
2012年11月12日 20:53
それと関連しているというか、この番組もそうなのでしょうが、日中「国交正常化」40周年の一連の企画なのでしょう。

企画当時は、日中関係がここまで悪化するとは、企画者たちには思いもよらなかったことなのでしょうが。

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