大河ドラマ『平清盛』第42回「鹿ヶ谷の陰謀」
まだ日付は変わっていないのですが、10月29日分の記事として掲載しておきます。今回は有名な鹿ヶ谷の陰謀が描かれました。近年では、成親・西光の殺害にいたったこの事件についてさまざまな解釈が提示されているようです。たとえば、この事件は平氏打倒の謀議の密告によるのではなく、基本的には、後白河法皇とその近臣が主導する延暦寺への武力攻撃を清盛が阻止しようとした軍事介入であった、との見解(川合康『日本中世の歴史3 源平の内乱と公武政権』)や、
https://sicambre.seesaa.net/article/200911article_1.html
清盛殺害計画はじっさいにあり、延暦寺への攻撃の回避という目的もあったものの、清盛は何よりも平家一門の分裂阻止を重視していた、との見解(元木泰雄『平清盛と後白河院』)
https://sicambre.seesaa.net/article/201205article_18.html
も提示されています。
今回描かれた鹿ヶ谷の陰謀は、謀議の舞台やそこでの言動など、基本的には通俗的な見解に従ったものになっており、大河ドラマとしては無難なところではないかな、と思います。ただ、今回は単純に通俗的な見解をなぞったのではなく、清盛と西光が政治家としてともに信西の弟子的存在だった、という設定を活かしたものになっており、清盛の国造りは私欲というか復讐に基づくもので、清盛には信西のような志はないのだと西光が指摘し、痛いところを突かれた清盛が激怒するという話になっており、清盛が無頼を気取っていた時代の話ともつながっていて、なかなか上手い構成になっていたように思います。
今回描かれた鹿ヶ谷の陰謀のもう一つの特徴は、清盛と伊豆の頼朝とを対比させつつ話を進行させたことです。頼朝は政子とのやり取りにより覚醒し、明日を再び見つけるところまで回復したのにたいして、私欲というか復讐にとらわれていることを指摘されて激昂し、明日を見失いかけつつあるが描かれた清盛ということなのでしょう。対照的な両者を比較させつつ話を展開させるというのはこの作品の特徴の一つなのですが、今回は、脚本・演出上の意図は分かるにしても、頻繁に挿入される伊豆の頼朝と政子の場面が邪魔で、鹿ヶ谷事件の緊張感を殺いだところが多分にあったように思えたのは残念でした。経宗や伊豆の頼朝・政子の場面は相変わらず戯画化が行き過ぎている感がありますが、それでも、全体的にはなかなか面白い回でした。今回はとにかく西光の存在感が抜群で、脚本・演出面で力が入っているというのもあるのでしょうが、何よりも加藤虎ノ介氏の起用が大成功だったように思います。
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清盛殺害計画はじっさいにあり、延暦寺への攻撃の回避という目的もあったものの、清盛は何よりも平家一門の分裂阻止を重視していた、との見解(元木泰雄『平清盛と後白河院』)
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も提示されています。
今回描かれた鹿ヶ谷の陰謀は、謀議の舞台やそこでの言動など、基本的には通俗的な見解に従ったものになっており、大河ドラマとしては無難なところではないかな、と思います。ただ、今回は単純に通俗的な見解をなぞったのではなく、清盛と西光が政治家としてともに信西の弟子的存在だった、という設定を活かしたものになっており、清盛の国造りは私欲というか復讐に基づくもので、清盛には信西のような志はないのだと西光が指摘し、痛いところを突かれた清盛が激怒するという話になっており、清盛が無頼を気取っていた時代の話ともつながっていて、なかなか上手い構成になっていたように思います。
今回描かれた鹿ヶ谷の陰謀のもう一つの特徴は、清盛と伊豆の頼朝とを対比させつつ話を進行させたことです。頼朝は政子とのやり取りにより覚醒し、明日を再び見つけるところまで回復したのにたいして、私欲というか復讐にとらわれていることを指摘されて激昂し、明日を見失いかけつつあるが描かれた清盛ということなのでしょう。対照的な両者を比較させつつ話を展開させるというのはこの作品の特徴の一つなのですが、今回は、脚本・演出上の意図は分かるにしても、頻繁に挿入される伊豆の頼朝と政子の場面が邪魔で、鹿ヶ谷事件の緊張感を殺いだところが多分にあったように思えたのは残念でした。経宗や伊豆の頼朝・政子の場面は相変わらず戯画化が行き過ぎている感がありますが、それでも、全体的にはなかなか面白い回でした。今回はとにかく西光の存在感が抜群で、脚本・演出面で力が入っているというのもあるのでしょうが、何よりも加藤虎ノ介氏の起用が大成功だったように思います。
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