アウストラロピテクス属の食性

 まだ日付は変わっていないのですが、9月28日分の記事として掲載しておきます。アウストラロピテクス属の食性と、パラントロプス属・初期ホモ属の食性との比較についての研究(Balter et al., 2012)の要約を読みました。じゅうらい、パラントロプス属は植物食に依存しており、同時代に存在していた初期ホモ属は雑食だった、と考えられてきました。この研究では、南アフリカで発見されたアウストラロピテクス属の歯のエナメル質に含まれる同位体の比率が分析され、パラントロプス属および初期ホモ属のそれと比較されました。パラントロプス属および初期ホモ属は、アウストラロピテクス属から分岐したと推測されています。

 この研究の分析結果によると、パラントロプス=ロブストスが初期ホモ属よりも植物食に依存していたことが改めて確認されましたが、興味深いのは、アウストラロピテクス属の食性がロブストスや初期ホモ属よりも多様だった、ということです。この研究では、アウストラロピテクス属の占有していた広範な生態的地位は分割され、アウストラロピテクス属よりも食性の多様性が低いパラントロプス属と初期ホモ属が占めたのだろう、と推測されています。歯は人体でもとくに残りやすい部位ですから、このように同位対比分析による食性の比較は今後進みそうで、大いに期待されます。


参考文献:
Balter V. et al.(2012): Evidence for dietary change but not landscape use in South African early hominins. Nature, 489, 558–560.
http://dx.doi.org/10.1038/nature11349

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